2013.5.23
「東南アジアの雄・シンガポール」~開発独裁国の姿
Asia Biz Inside vol.6 参議院議員山田太郎のアジアビジネス・インサイドレポート
~沸騰するアジアビスの現場から~
2013年05月22日
シンガポールは、政治はタブー!?
「政治の話はやめてください!」
シンガポールの元首相のリー・クワンユー氏の話をしようとすると、友人は私の話をさえぎった。そう、シンガポールはつい最近まで政治の話はタブーの国だった。
政府や警察の監視の目が光っていて、何か問題を起こすと役人に連れて行かれるという記憶が生々しいのだという。
さらにシンガポールは「管理国家」としても有名。
ゴミひとつ落ちていない街、ゴミを捨てたら罰金、ガムの国内販売も禁止、だから、シンガポールではガムを食べることはできない。旅行中のアメリカ青年がスプレーで落書きをしたら鞭打ちの刑、米国政府と外交問題にもなった、などなど。シンガポールの管理は徹底している。「明るい北朝鮮!?」と揶揄されることもある。
シンガポールは、「Fine City」と呼ばれるが、綺麗と同時に「罰金」の意味もあるという皮肉。とにかく、街のあらゆるところに「FINE 5000ドル」等の張り紙があるのだ。
シンガポールの華麗なる一族
いくら政治の話がタブーと言っても、この国の今日の発展は、リー・クワンユー元首相の話を抜きにしては語れない。いや、すべては彼によって、国の隅から隅まで国家開発がデザインされたと言っても過言ではない。
Photo1:建国の父、リー・クワンユー元首相(Wikipediaより)
彼には様々な逸話が多い。
シンガポールの政治改革を行う際、まず官庁にエアコンを最初に導入したのだという。「シンガポールは湿度も伴って強烈な暑さを感じる。これでは、政治を支える役人が仕事にならない」というのが理由だという。
「日本の箸を見ろ。日本の箸は持ちやすいように、工夫して箸全体が細く軽くしている。一方、過去の習慣を変えられない中国の箸は持ちにくくてつかみにくい。いいものに変える日本人の姿勢を学べ」と号令をかけた。
そして、彼は、今でもシンガポールのすべてを握っている。
リー・クワンユー氏の長男、リーシェンロン氏は現在のシンガポール首相。次男は、国内最大の通信会社、シングテルの元CEO。シンガポール航空、DBS銀行の株主である、国内最大の財閥セマティックグループの元CEOは、長男の妻であった。まさに華麗なる一族だ。
知られざる工業国家・シンガポール
シンガポールはアジア最大の金融の街として知られている。あまたの国際的な銀行も多く、東南アジア最大の金融センターでもある。
しかし、シンガポールは一方で、立派な製造業に立脚した国でもあるのだ。
「え、シンガポールで製造業?あんな狭く人口が少ない国のどこに製造業が?」と思う人もいるかもしれないが、シンガポールは政策で「自国の産業の30%は製造業を行う」と決めている。
その割合は、日本のGDPに占める製造業貿易輸出割合より大きい。逆に日本の製造業が占める割合は、すでに、17%以下にまで下がってしまった。日本はもはや製造立国とは言えなくなってきたのだ。
そして、国土の狭いシンガポールには、820haにも及ぶジュロン工業団地をはじめ多くの工業団地が存在する。さらに、このジュロン工業団地は、東南アジア最大の規模なのだ。
次はミャンマーのダーウエ工業団地やカラワン工業団地がその規模を追いかけて開発している。
「えー、シンガポールの次はミャンマーなの?」と実は、東南アジアビジネスの展開は日本人の知らないことがたくさんある。
技術を身に着けようとするシンガポールは、リー・クワンユー元首相のもと製造業を発展させてきたのだ。
Photo2:シンガポールで大成功した日本の「まる玉ラーメン」(日本国内は4店舗のみだが、シンガポールで5店舗、インドネシア2店舗、その他、タイ1店舗、マレーシア3店舗、香港1店舗と、続々と展開している)
沸騰する不動産開発「イスカンダル計画」
シンガポールに接するマレーシアの都市・ジョホールバル。シンガポールが約550万人の人口に対してここは約90万人の都市だ。ここの不動産開発が沸騰している。「イスカンダル計画」としてシンガポールの2倍以上の地域の大規模開発を行っているのだ。
シンガポールに比べて物価が比較的安いマレーシア、そのため、ジョホールバルの土地の値段もまだまだ安い。物価もシンガポールの約半分くらいだ。
ジョホールバルへは、シンガポールの中心地からバスで約40分、誰でも手軽に行ける。
そのバスが国境までなんと日本円で200円もしない。あまりの安さに何度も為替換算を確認してしまったほどだ。
そのお隣の国は、広大な土地でマンション建設がラッシュを迎えている。
値段は、2DKで2000万円ぐらい。?単価は10万円程度だ。お手頃な値段で買える。そして物価はシンガポールの景気や価格差にも引きずられ、利回りは7%程度つくのだ。
そこに、日本人の投資家が殺到している。
Photo3:ジョホールバルの「イスカンダル計画」
(シンガポール島を取り囲む様に大規模開発をしている)
開発中のマンションに来るバス、来るバス、日本人の投資ツアーの面々なのだ。居つくかの投資対象のマンションを見学して、もう3つ目ぐらいには2000万円ぐらいの物件をその場で買って帰る日本人が多いのだという。
沸騰するアジア、中でもシンガポールには、キャピタルゲイン税や相続税もない。フライングマネーの行きつく先として密かに移住する日本人も多いのだ。