2015.8.4

政府は本当に日本の安全保障リスクを洗い出せているのか?

8月4日、参議院農林水産委員会で質疑を行いました。

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【今日の質疑のポイント】
・エネルギーの安全保障の観点から、ホルムズ海峡の機雷掃海が存立危機事態になる一方で、食料の面から日本が危機に陥ることは考えられないのか。また、その想定はしているのか?という質問を行いました。

 →「日本の食料の自給率が40%程度あるので、食料面から安全保障に影響を与えることは想定していない」と言う答弁に、政府の安全保障に対する考え方が偏っていることに驚きました。

憲法の解釈まで強引に変えてでも安全保障法制を急ぎ進めたい政府。ただ急ぐあまり、日本の安全保障リスクをきちんと洗い出しているのかどうか?不安を覚えます。

・大筋合意に至らなかったTPPの今後について、
今後のスケジュールは、どうなるのか。合意に至れば日本の食の安定供給に大きな影響がでるだけに、これまでの日本の農政の大転換が必要ではないかと質問を行いました。

・先日発表された骨太の方針と日本再興戦略について
2020年に農産物の輸出額を現在の6,117億円から1兆円に伸ばすことを掲げているが、中には加工品も含まれている点を指摘しました。

私は輸出額の拡大だけでなく、問題は中身であると考えます。国際競争において、海外の安い材料を仕入れて輸出額だけを増やしても、本来の目的である国内産業の成長効果がどれほどあるのでしょうか?その点が検討されていない政府の計画は、問題ではないでしょうか。

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【議事録】
山田太郎君 日本を元気にする会の山田太郎でございます。大トリを務めさせていただきます。あとちょっとでございますので頑張って元気にいきたいなと、こういうふうに思っております。
 さて、今日、農協それから農地法、農業委員会の話、かつて私が質疑させていただいた質問についても、多くの委員の方、いい意味でも悪い意味でもたくさん取り上げていただいて大変光栄に思っております。この場を改めてお礼に代えさせていただきたいと思います。
   〔委員長退席、理事野村哲郎君着席〕
 さて、最初に、ちょっと旬というか、これも国にとって非常に重要な話だと思いますので、ちょっと違う角度から今日は、時間がありますので、お時間をいただいて質疑させていただきたいんですが、食料の安全保障という辺りを少し、入口、お話しさせていただきたいと思います。
 今、国会の方で、安保法制ということで国の防衛に関してどうしていくのかということが議論されていますが、実は、その骨太の方針、六月三十日に閣議決定で出たものについても食料安全保障の確立ということが僅かではありますが掲げられています。
 安保法制の委員会の方、私も出させていただいているんですけれども、エネルギーに関する確保、シーレーン、それが確保できないとそれ自身は存立危機事態になると、こういうような話が連日議論されているんですが、実は一方で、エネルギーも大事ですが、やはり我が国食料ということもとても大事な論点だというふうに思っております。
 自給率が三九%しかないということも取り上げられますし、総理の方は、ガソリンが来なくなれば救急車が動かなくなるとか北海道の方は冬凍死するということですが、食べ物がなくなれば餓死してしまうわけでありまして、やはりエネルギーにも勝る、私は食料というのは一つの安全保障の対象なのではないかなと、こういうふうにも思ったりするわけであります。
 そこで、今日は内閣の方からも、官房の方からも来ていただいていると思いますが、食料供給におけるシーレーンの論点、あるいは食料の備蓄、それから周辺諸国、あえて国名は出しませんが、国交断絶等による食料の影響、あるいはそういう大国、周辺の仲が悪くなった大国が買占めというか、かなり大きい国でございますから、買い付けをして買い負けをするのではないか、そうすると食料の確保自身も有事の際は非常に厳しい事態にもなるのではないか、いろんなことが想定はされるというふうに思っております。
 そんなところから、まず、内閣府来ていただいていると思いますので、今回の食料に対する危機というのは実際の存立危機事態に当たるのかどうか、その辺りを教えていただけますでしょうか。
   〔理事野村哲郎君退席、委員長着席〕

副大臣(左藤章君) 今お話のありました平和安全法制に関してですけれども、食料の危機はこれには該当しないんだろうと、このように思っております。

山田太郎君 なぜエネルギーは該当して食料は来なくても該当しないんでしょうか。その辺りがちょっとよく分からないんですが、もう一度その違いについて教えていただきたいんですが。

副大臣(左藤章君) 食料の安全供給を将来にわたって確保することは、国民に対する国家の基本的責務であると思っております。
 食料輸入の途絶等の不測時においても国民が最低限度必要とする食料の供給を確保し食料安全保障を図ることは、国の重要な課題と認識をしております。食料・農業・農村基本法や緊急事態食料安全保障指針等に基づき、政府全体で総合的な食料安全保障の確立を図ってまいりたいと思っております。
 先生の御指摘があった食料については、エネルギーに比べて自給率が高うございます。先ほどお話がありましたカロリーベースでいいますと三九%、生産額でいえば六五%ということになりますし、エネルギーは自給率が四・四%であります。そういう状況に応じて作物を転換して対応することができ、また、特定の地域のみから輸入しているものではないため、特定地域からの輸出入が滞ることがあっても、石油などのエネルギー源などと異なり、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死に関わるような深刻、重大な影響が生じることは想定されないと、このように考えております。

山田太郎君 それでは、政府は自給率三九%であれば大丈夫だということをおっしゃっているのに等しいんですが、それでよろしいんでしょうか。
 それから、特定の場所じゃないと言っていますが、確かに石油はホルムズ海峡を通過してくるものが八割ですが、実際、日本の例えば電気ということを考えれば、LNGのガスであったりだとかその他石炭であったりとかというのは多様化しているわけでありまして、それでも今回石油が特に取り上げられて電気の問題とかというのも語っているということは、必ずしもいわゆるエネルギーに関して特定な場所にあるからという理屈では通らないと思うんですが。まず、特に私としてはちょっと驚きなのが、自給率三九%ということは、それで十分有事の際でも我が国は賄えると、そういう発想にあるのかどうか、もう一度お答えいただけますか。

副大臣(左藤章君) 三九%、特に米の備蓄もたくさんありますし、先ほど申し上げましたけれども、特定の地域から輸出入が滞るということはないと思います。農水省また外務省も含めて、いろんな努力をしながらしっかり食料の確保をすると、このように思っております。

山田太郎君 これは農水省さんにもお伺いしたいと思うんですが、先ほど小泉副大臣もお手を挙げていたので、農水省さんの認識。本当に食料、輸入に物すごい残念ながら頼ってしまっている。自給率が低いのをこの委員会でもずっと議論していたので、やっぱり有事の際、もちろん何も起こらなければこんなことを議論する必要はないんですけれども、一連の安保法制の中ではいいタイミングですから、しっかり私はやっておくべきだと思っているんですが、もし農水省の方からも御意見あればいただけますか。

副大臣(小泉昭男君) 我が国の農産物の備蓄でございますけれども、これは消費者、実需者の安定的な食料の供給を確保するためでございまして、これまでの国内外での不作や輸出国における輸送問題の発生等を考慮いたしまして、米につきましては百万トン程度。食糧用小麦につきましては、外国産食糧用小麦の需要量の二・三か月分、これは九十四万トン。飼料穀物、これはトウモロコシ等でございますが、これは百二十五万トン、この内訳としますと、国の備蓄分六十万トン、民間の備蓄が六十五万トンでありまして、この備蓄を実施しているところでございます。
 以上でございます。

山田太郎君 今のだと、途中でもコメントありましたが、需要の数%ということでもあると思うんですが、それで、もし有事の際、食料安全保障という観点からすると、農水省さん自身は十分だというふうにお考えなんでしょうか。

国務大臣(林芳正君) 食料の安定供給を将来にわたって確保していくということは基本的な我々の責務であると、こういうふうに思っておりまして、国内農業生産の増大を図るということを基本として、これと輸入と備蓄を適切に組み合わせると、これが食料の安定的な供給の確保の基本的な方針でございます。
 したがって、今、副大臣からは備蓄についてお答えをさせていただきましたけれども、先ほど、今日は内閣府の副大臣としてお見えになっている左藤副大臣からお話がありましたように、石油に比べますといろんなところから食料はやっていけるということですが、一方で、世界の食料需給、タイトになってくるというのも事実でございますので、この不安定な要素は常にあるわけでございます。
 したがって、凶作や輸入の途絶等の不測時において国民が最低限度必要とする食料の供給を確保できるように、緊急事態の食料安全保障指針、こういうものを定めております。実際に何か起こって食料の供給に影響を及ぼすおそれがある場合は、この緊急事態食料安全保障指針に基づいて、事態の深刻度、レベルに応じて、備蓄の活用や輸入先の多元化、それから価格、流通の安定のための措置の発動、熱量効率の高い作物への生産転換、こういう取組を実施すると、こういうふうにしております。

山田太郎君 確かに農水省さんはこの食料供給に係るリスクの分析、評価というのはしっかりやっていらっしゃるんですよね。私も知らなかったんですが、食料安全保障課というのがありまして、ただ、昨日レクでお聞きしたのは、有事ということはちょっと一切検討はないと、いわゆる内閣の方からも指導で下りてきたこともないので、あくまでも天候不順とかいろんな災害とか、そういったところを中心にやられているんですが。
 私は、あってはならないですし、起こらなければ最もいいんですが、やはり政府は国民の生活、安全、生命守っているわけですから、この食料に関してもエネルギーと同等に、しっかり大丈夫だといったことをやはり取り越し苦労と言われても検討しておくということが今回の安保法制の中でももしかしたら筋なのではないかなと。大丈夫というふうにきちっと言っていただくにはもうちょっと検討していただいた方がいいんじゃないかと、こういうふうに思っています。
 ただ、もう一つ気になりますのが、これはもしかしたら西村副大臣のところの御担当か分からないんですけれども、骨太の方針の方で、農林水産業の中に食料安全保障の確保等を図るというふうに書いてあるんですけれども、このいわゆる食料安全保障というのは、有事等を想定したものなんでしょうか、そうじゃないんでしょうか。通常、我々農水委員会だと、食料安定供給とかという言葉を使うので、余り安全保障ということをなかなか議論してこなかったと思うんですが、その辺り、どういう意味合いなのか教えていただけますか。

副大臣(西村康稔君) 済みません、私に通告はなかったものですからあれですけれども、骨太の方針に農業についての記述がございまして、その中で様々なことが書いてございますけれども、ここでは一般的に、食料の自給を上げていく、全体として安全保障、食料としてしっかり供給できる体制をつくるということを書いているわけでございます。

山田太郎君 分かりました。
 左藤副大臣の方は、安全保障関係はこの辺で終わりますので、もし委員長お許しいただければ、これで結構でございます。

委員長(山田俊男君) 左藤副大臣、結構でございます。

山田太郎君 次に、TPPの件がやはり今重要なテーマにもなっていますので、この辺り行きたいというふうに思っております。
 国際通商交渉は極めて重要だというふうに思っておりますが、ただ、ここまで情報がない、それから、影響度は極めて大きいという中で、やはりそのまま批准されてしまう、又は、分からない中でこういう状態にいるということは看過できないというのは私も立場は同じでありまして、農林水産委員会通じてずっとこの議論が今日続いたのかというふうに思っています。
 私も、何名かの委員が聞いたんですが、改めて確認をしておきたいので。今後のスケジュールですね、先ほど来、もし締結したらばということになるのでありますが、十一月末まで国会には持ってこれないと。そうすると、国会ではどこで審議されるのか、臨時国会で一旦は出すのか、来年の通常国会で出されるのか。これは批准の準備だけではなくて二十一項目いろんな項目に及びますから、関連法のいわゆる見直しも一緒にやるということになると、相当な量の作業が出てくると。
 今回、もちろん、フローティングしてしまって、認められなければ、まあそれだけよということになりますが、やはり我々は、国民への影響を考えると、時間がない中で突然国会では大騒ぎになってそういったものを議論しなければいけない、心構えも必要だということもありますので、この辺のスケジュール、今後大筋合意に至った場合に、どのようなスケジュールになって、国会ではどんな審議を政府として求めていく予定なのか、中身を聞いているわけじゃないので、この辺りは開示していただけると思うので、是非教えていただけないでしょうか。

副大臣(西村康稔君) もう御案内のとおり、閣僚会合がハワイで開かれまして、それでかなりの部分が前進をしたわけでありますけれども、引き続きまだ未決着の部分がありますので、これについて今後とも交渉の早期妥結に向けて努力を継続するという認識が各国で共有されております。残された論点について各国が持ち帰った上で、八月末までに閣僚会合を開催するというのが共通認識になっておりますので、何とかそうなるように今後も事務的なレベルでの交渉を含めて進めたいと思いますが、具体的な日程はまだ調整中でございます。
 その上で、今後も早期妥結に向けて我々としても努力をしていくわけでありますけれども、全体としてTPP交渉の大筋合意がなされて、それから協定の署名が行われた場合には、国会においてできるだけ早いタイミングで御審議いただくということが重要であると考えておりますし、もちろん、中身が大部にわたりますので、しっかりと御審議いただいて御承認いただくということを私ども全力を挙げて頑張っていきたいと思っておりますけれども、具体的な日程は、今後の交渉日程、状況によりますので、今の段階では何とも申し上げられませんけれども、できるだけ早く、署名がなされれば国会で御審議いただくということで臨んでまいりたい、検討してまいりたいというふうに考えております。

山田太郎君 前回、これ、西村副大臣だったのか澁谷審議官だったのかちょっと覚えていないんですけど、大筋合意が結ばれた段階である程度のことを発表すると、こういう御答弁をいただいたかと思うんですね。問題は、今大筋合意が決まったらば、署名というのはどれぐらいになるのか、それで、署名によって基本的には最終フィックスされたものがいわゆる国民にも国会にも開示されるということになると思うんですけれども、やはりこの開示のタイミングというのが突然来れば非常にやっぱり混乱はすると思っていますので、できれば大体、見通しというのがやっぱりあるというふうに思っているんですけれども、大筋合意をされてから署名までどれぐらいで、署名をされて要はその内容が全てテキストベースで明らかにされるのはどれぐらいなのか、御答弁いただけないでしょうか。

副大臣(西村康稔君) 大筋合意がなされれば、これはできる限りその内容について開示をしてまいりたいと思いますし、それから、もちろん中身については各国間で、各国十二か国ありますので、そこで相談をして、こういう形で出そうということで相談をもちろんしていくわけでありますけれども、できる限り開示はしていきたいと。
 その上で、交渉結果のその中身については、条文については、テキストについては、御案内のとおり、リーガルスクラブと言われる、法制的にしっかりと文言が整理されているかどうか、こういったものの作業もありますので一定の期間が掛かると。さらには、アメリカにおいては、大筋合意後、署名の九十日前までに議会に通知をするというふうなルールになっておりますので、普通に考えれば、そういうリーガルスクラブの期間と米国の手続等を考えれば三か月ぐらい掛かるんだろう、九十日掛かるんだろうということでありますので、その段階で署名がなされ、そのテキストブックも正式な形で公開されるということでありますし、あわせて、日本の場合は日本語に訳して法制局でその条文について審査をしてもらわなきゃいけませんので、できるだけ早いタイミングで国会に提出できるように、作業もできる部分は並行的にもやっていきたいというふうに考えております。

山田太郎君 もう一つ確認なんですが、批准の作業とともに関連法の見直しというのは多分いろいろしなければならないんじゃないかなというふうに思っているんですね。それも併せて同じタイミングでやっていくのか、既にその関連法は内部ではある程度議論されているのか、ちょっとその辺りの進捗等について、中身を聞いているわけじゃないんで、この辺りも外形的なことをお答えいただけないでしょうか。

副大臣(西村康稔君) まだ最終的に決着をしておりませんので、具体的にどういった法律的な手当てが国内法で要るのかというところは、まあ頭の体操、こういうふうに決まればこうなるのかなというのは、ぼんやりとしたところはもちろん思い描きながら交渉しているわけでありますけれども、それは決着をしてから正式にはしっかりと中身を詰めて、必要な法的な手当てが必要なのかどうか考えていくことになります。

山田太郎君 西村副大臣の頭の体操のぼんやりした中で結構ですので、見通しみたいなものを是非示していただきたいんですけど、その辺りは示していただけないんですか。

副大臣(西村康稔君) これは、最終的に合意できる見通しが立って、最終的に合意してからしっかりと私どもも考えてお示しをしていきたいというふうに考えております。

山田太郎君 でも、前回、大筋合意できるつもりで、今日もそういう委員会での質問あったわけですから、当然スケジュールは立っていたと思うんですけれども、せめてもスケジュール感だけでも、仮に八月中に合意にということで至ればどうなるかということはもう決まっているはずだと思っていますし、示していただけないですかね。

副大臣(西村康稔君) 今申し上げましたとおり、大筋合意をしてから署名までおよそ三か月ぐらいは掛かるということでありますので、その間に私どもも必要な法律の手当て、どういったものが必要になるのかしっかりと整理をして、もちろんどの程度のものになるのかもまだ分かりませんので、その間にしっかりと整理をして、また国会の皆さんにも、委員の皆様方にもお示しをするときが来るんだろうというふうに思います。

山田太郎君 済みません、しつこくて申し訳ないんですけど、具体的な、テキストの全文というのは大筋合意後直ちに見せていただけそうなスケジュールなんでしょうか、それとも署名に至った段階なのか。訳というのが残っていると思いますが、英文での合意というのはあると思うので、その辺りも具体的にいかがでしょうか。

副大臣(西村康稔君) これも繰り返しになりますけれども、正式なテキストは法制的なそのリーガルスクラブと言われるチェックを経てからになりますので、私ども、大筋合意の後、できる限りその内容については開示をしていきたいと思いますし、どの程度できるか、これも各国間で整理をして協議をして、その上でお示しをしていくことになりますけれども、法的なチェックを終えた正式なものはこれは署名後になってくるんだろうというふうに思います。

山田太郎君 済みません、TPPの話の関連にもなるんですが、ちょっと思考というか方向性を変えて農水省と少しやりたいと思っているんですが。
 バターが実は足りなくなった件、いろんなことがあってなかなかこの委員会で取り上げられないまま、何かうやむやとまでは言わないんですけど、やっぱり緊急輸入をしたということで、実は、これ、国家貿易でやっていても、実際にはこの十年間で二〇〇八年、二〇一一年、二〇一二年、二〇一四年で不足が生じていると。どうしてなのかなということでありまして、食料の安定供給を元々農水省さんのいわゆる基本政策としているにもかかわらず、かえってその規制自身が不足等をもたらしているというのは、正直失策なんじゃないかなと、こういう意味で懸念をしております。
 そんな中で、ここからちょっと関連でお伺いしたいと思うのは、例えばTPPでもって、バター等、乳製品含めて関税云々となっていますが、グローバルにこういったものが展開すれば、生乳の価格なんかよりも弱い製品であるこのバターが、生乳、チーズ、バターという順で来るからという話はもう皆さん御存じだと思いますが、かえって混乱をするかもしれない。こういう、要はただ国内に入れる入れないという議論だけではなくて、需給のバランスというのが極めて取りにくい産品に関して、今後TPPでもって関税を下げた場合にどうやって一体コントロールしていくことができるのか。いく気なのか、あるいはそういったものは国際通商上、自由貿易の方向性に行くのでもうコントロールすることはできないと、こういうことになるのか。その辺り、今後どういうメカニズムでこういったものを、例えばバターなんというのは今回こういうことになっていますから分かりやすいと思うんですが、教えていただけないでしょうか。

国務大臣(林芳正君) バターや脱脂粉乳は様々な食品に利用される一方で、今、山田委員からもお話がありましたように、需給が緩和した場合は、生乳と違いまして在庫として保存が可能である、そういうものでございますので、生乳の需給の安定を図る上でも大変重要な役割を果たしております。
 我が国の生乳の需給ですが、天候の変動等によって変動しやすいわけでございます。したがって、バターや脱脂粉乳が無秩序に輸入をされますと、牛乳も含めた乳製品全体の国内需給に影響を及ぼすと、こういうことにもなってくるわけでございます。したがって、国内への影響を最小限にするように、輸入して売り渡す乳製品の量、時期等を選択、調整することが可能である国家貿易によりまして、逼迫時には機動的に追加輸入を実施し、緩和時には輸入時期を調整する等によって需給の安定を図ることが重要と考えております。
 御指摘のように、バターが足りなくなって緊急輸入をするということがあったわけでございますので、こういう運用の面でしっかりとそういうことを起こらないようにする。情報を適切に出して、小まめにこういう追加輸入ができるようなことをすると同時に、それをあらかじめアナウンスをするということで、急いで買占め等が起こらないようにすると、こういう運用の改善を行ったところでございますが、こういう適切な運用によって、牛乳、乳製品の安定的供給を図ってまいりたいと思っております。

山田太郎君 TPPによっていわゆるこういう国家貿易、ほかにも麦なんかも国家貿易をやっていると思うんですが、これらはどうなってしまうのか、その辺り、いかがなんでしょうか。

国務大臣(林芳正君) これはそれぞれの制度は、我々の制度として持っておるわけでございますが、今TPP交渉でこれがどうなっているのかというのは交渉の中身になってしまいますので、私から言及することは差し控えさせていただきたいと思います。

山田太郎君 そうであれば、当然国益を守るという意味においては、国家貿易の必要性ということは先ほど大臣も御答弁いただいていたので、これは守り抜く、こういうシステムは維持しつつTPPを受け入れると、こういうことでよろしいでしょうかね。

国務大臣(林芳正君) バターや脱粉のお話をしたときの国家貿易についての考え方を御披露したとおりでございますので、そういうことも踏まえて決議ができていると、こういうふうに理解をしております。したがって、その決議を守ったと評価されるようにしっかり交渉してまいりたいと思っております。

山田太郎君 何とか一つ明らかになったかなというふうに思っておりますけれども、さて、もう一つ、自給率とTPPの関係という辺りで、今後農政の政策は農水省さん自身どうしていかれるのか、この辺りも大変気になるところがあります。
 いろいろ農水省さんの方も今回のTPPに関してどれぐらいの影響があるかということをまとめた資料もありまして、今の自給率四〇%弱から二七%ぐらいに落ち込むんではないか、こんなことを農水省さんは以前の資料で出されているわけであります。
 そうなってくると、実は自給率が極めて厳しい農作物が、今回関税のいわゆる低減、撤廃に近づけられるわけでありますから、どうやって自給率を重視した政策を整合性を持ってやっていくのかということについて何となくよく分からないというか、これ、もし自給率そのものを目指すことがTPPと不整合になってきますと、農水省さんそのもののこれまでの政策がもう抜本的に変わってきてしまうのではないか、こういうふうにも思うわけでありますけれども、この辺り、大臣なのか御担当の三役なのか、是非教えていただきたいんですが、いかがでしょうか。

国務大臣(林芳正君) 交渉の中身については全体をパッケージでやっておりますので、現時点で確定しているものはないということでございますが、先ほど食料安保のところでお話をしましたように、世界の食料の需給、それから貿易、これは不安定な要素を有しております。安定供給というものを将来にわたって確保していくということが大変に大事な責務でございまして、やはり先ほど申し上げたように、国内の農業生産の増大を図ることを基本として輸入と備蓄を適切に組み合わせて行うと、こういう考え方でございます。したがって、TPP交渉いかんにかかわらず、国内農業生産の増大を図って食料自給率を向上させるということは極めて重要な課題であると認識しております。
 食料・農業・農村基本法についても、自給率の向上を図ることを旨としてその目標を定めまして、目標達成に向けて各種施策を総合的かつ計画的に講じていくと、こういうふうになっておりますが、これは変わらずにやっていきたいと思っております。

山田太郎君 今回、何でさっきスケジュールをあんなにもしつこく聞いたかといいますと、こういう重大なことをもしかしたら物すごい短い期間に転換して、今後、我々は政府と一緒になって国会も決めなければいけない事態に私はなるのかもしれないと思って危惧しているので、ちょっとこだわったのですが。それは、これまで我々も農水で積み上げてきたいろんな議論があった。米をできるだけ自給一〇〇%にする、だけれども、それがいわゆる過剰な場合には、飼料用米の話もしました。
 ただ、飼料用米も、今回考えてみると、お肉そのものが外から入ってくることになれば、あるいはそういったものの飼料もどんどん入ってくることになれば、一体どういうふうにそういったことはなっていっちゃうんだろうということ、すごく時間を掛けてこれまで議論して積み上げてきた農業政策が一気に転換されるかもしれないということは、私は考えてみると何となく空恐ろしいな。国会で議論しているよりも現場の農家の方々は確かに頭真っ白というか、どうなっていっちゃうんだろうと。我々も分からないわけですから、ますます現場で頑張っていらっしゃる方はもっと分からないんじゃないかと、こういうふうに思うわけなんですよね。
 そうなってくると、農業政策の中でも最も重要な、いわゆる自給率向上と言っていた、もちろん私自身も、自給率向上そのものは問題も多いし、考え方は変えるべきだという議論はしてきたものの、やはり国内におけるある程度の食料の供給、生産というものは確保せにゃならぬということについては当然だというふうには思っておりますので、その辺りの整合が全くできなくなってしまうんではないかな、そう思うんですが、端的に大臣にお聞きしたいんですが、自給率というものを重視した政策を転換する可能性はやっぱり秘めているのかどうか、TPPを受け入れたことによってそういう可能性はあるのかどうか、その辺り言及いただけないでしょうか。

国務大臣(林芳正君) 先ほど申し上げましたように、国内生産を増大を図ることを基本として輸入と備蓄を組み合わせて食料安保を図っていくと、これは基本法にも書いてございますし、基本計画を定めたわけでございまして、TPPいかんにかかわらずその方針は変えずにやっていくと、先ほど答弁したとおりでございます。

山田太郎君 それは分かるんですが、整合を持っていかないと、例えば外からも輸入で入ってくる、国内でも増産する、そうなればいわゆる供給過多になりますから、価格の問題だって大いに関係してくるわけであります。農作物は非常に微妙なところで需給のバランス、ほぼ多分、農作物の量と価格の問題というのも毎回議論になりながらここでも随分解決してきたんですけれども、そんないわゆる国内の分に関してできるだけ需給を図っていく、生産も止めないで頑張っていくということだけで、果たして今度は、じゃ、価格とか量の問題だったりとか、それの延長上で日本のいわゆる農業が本当に振興を維持していけるんだろうか。私は、申し訳ないんですけれども、今の大臣の答弁では全く分からないんですね。もう一度その辺り、是非お考えをいただきたい。
 とにかく国内での要は需給、でも、それは外から入ってくるものと見合いでもって考えていかなければ供給過剰にもなる。だけれども、国際的に今度は需要が逼迫すれば当然減ってということで、非常に不安定な状況にもなるんだというふうに思っていますが、その辺りの考え方、これは単なる自給率向上であったりとか今の食料・農業・農村計画の中ではとてもではないけれども堪えられないいわゆる議論だというふうに思っています。
 その辺り、もう一度、大臣、お答えいただけないでしょうか。

国務大臣(林芳正君) まだTPPがまさに交渉中でございますので、TPP交渉はどういう形になるのか、また、ある形になった場合にどういう影響が出るのかということをこの時点でお話ができないわけでございますが、どういう影響になるかも含めて、しっかりと結論が出た場合にはこの影響を見定めていかなければならないと、こういうふうに思っておりますが、その上で、先ほど申し上げましたように、基本的な方針というのは、国内の生産の増大を図ることを基本として食料安保を図っていくと、この方針を変えることはなく、しっかりとやっていきたいと思っております。
 これまでもいろいろと、最近では日豪というのがございましたけれども、いろんなことをやってまいりましたけれども、その都度、基本方針について何か根本的な変化を来したということではございませんので、今回も食料安保という基本的な方針については変わらずにやってまいると、こういう考え方でございます。

山田太郎君 もう一つ、担い手ということについて私はこだわってこの委員会で少しやらせていただいていますが、TPPの影響によって担い手がどうなっていくのか、余りその言及がこれまで少なかった気もしています。最初に農水省さんが出された資料は、就業機会の減少数三百五十万人程度と軽く書いてあるのでありますけれども、これをまともに解釈しますと誰もいなくなっちゃうというか、そういうことでありまして、何だかいろんな数字が整合性が合っていないんじゃないか、本当に担い手はどうなっていくのか、こういうことがすごく心配なわけであります。
 そうなってくると、もう一つ、担い手がどうなるかという質問と、もう一点併せて関連するのでお聞きしたいのは、今回、もし守るとすると、果たして農地を守ろうとしているのか、要は担い手たる人を守ろうとしているのか、産業としての農業を守ろうとしているのか。もちろん、こう聞けば全てですというふうになると思いますが、そこにはプライオリティーという話も私はあるというふうに思っております。
 私は、まず、担い手がいなければどんな産業も始まらないので担い手を守る、そうなってくると、対策としては、もしかしたらかつてあった直接支払みたいなものだっていわゆる議論の対象になってくる、こういうことを総合的に考えなければこのTPP後のいわゆる議論というのは始まらないんじゃないかなと思っていますが、その辺り、大臣、言及いただけないですか。

国務大臣(林芳正君) まさに担い手、農地それぞれ大事でありまして、それぞれがそろいませんと農業というのはやっていけないと、こういうことであろうかと、こういうふうに思っております。
 繰り返しになって恐縮ですが、まだ交渉中でございますので、どういう影響が出るのかというのはなかなか難しいわけでございますが、先ほど委員がおっしゃった、前にやったやつだと思いますけれども、これはまさに即日関税を全部撤廃をする、国内対策も全く行わない、こういうかなり極端な前提を置いて行った指標、計算でございまして、まさにそういうふうにならないように決議もいただいておりますし、その決議をしっかりと守ったと評価されるようにやっていくということだと思います。

山田太郎君 私は、担い手が二万人増えないと本当に農業が成り立たないという最悪のタイミングにちょっとこのいわゆる問題は当たっちゃっているのかなと思っていて、これ、しっかりその後の議論もしていかないと、とてもではないけれども私は日本の農業は耐えられないというふうに思っています。
 さて、せっかく西村副大臣にも来ていただいていますので、もう一個だけ、骨太と再興戦略のところの農政改革でお話を伺いたいんですが、安倍総理、さんざん農業輸出を一兆円に向けて拡大していくと、こういうふうにおっしゃっているんですが、ただ、私分からないのは、国内の農作物や雇用に対する寄与率がどれぐらいなのかということが分からないんですね。過度に輸出を強化しようと思いますと、実際に今回、二〇二〇年の目標は一兆円だということで、内訳を見ると加工食品というのが非常に多いということも分かってくるんですが、そうなってくると、安い原料を使おうと思うと結局輸入が増えちゃう、こういうふうにもなりかねないわけでありまして、何のためのいわゆる輸出拡大だったか分からなくなってしまうということにもなりかねないと思っています。
 そういう意味で、今回の安倍総理等がおっしゃられている骨太、再興戦略の中でも表れている、いわゆる農業産物一兆円の国内に対するその寄与率というんですかね、金額であれば、パーセンテージでもいいんですが、是非その辺りを教えていただけないでしょうか。

副大臣(西村康稔君) ちょっと通告にそれはございませんでしたので、用意をしておりませんが。
 ただ、御指摘のとおり、農産物の輸出、これ、二〇二〇年一兆円目標、これをできるだけ前倒し達成を目指して進めているところでございまして、これは国内の農林水産業に対して様々なチャンスが生まれてくると思いますので、当然、活性化、それからいろんな刺激を与えて、これがまた構造改革、競争力強化にもつながってくるというふうに理解をしております。

山田太郎君 通告はしていますし、昨日の事務方のお話では、その寄与率、それから国内においてその一兆円の内訳がどれぐらいの国内産物になるかは実は分からないというふうにお伺いしているんですが、そうじゃないんでしょうか。もう一度お答えいただけないですか。

政府参考人(櫻庭英悦君) 先生御指摘の点でございますけれども、例えば平成二十六年の輸出額六千百十七億円でございますけれども、うち加工食品が千七百六十三億円、残り四千三百五十四億円でございますけれども、農産物が千八百六億円、林産物が二百十一億円、水産物が二千三百三十七億円となっておりまして、ここの一次産品の大部分は国産と推計されております。
 また、食品製造業の国産原料の調達割合、これはちょっと古うございますけれども、平成十七年の産業連関表で推計しますと約七割、国産の使用割合が七割ということでございますので、これらから推計すると、輸出にはかなりの部分国産のものが使われていると思いますけれども、御指摘のとおり、これらにどのように寄与するかという統計データはございません。
 今御指摘の点は非常に重要なことでもありますので、国産品の生産拡大にどの程度寄与するかというのを何らかの形で推計を試みていきたいという具合に考えているところでございます。

山田太郎君 確かに、産業関連表がないというのも今問題で、これは前回、紙先生の方からも御指摘があった点だと。私も、産業関連表がいつできるのか、いつできるのかと最新のものを待ちわびているわけでありますが、これは是非早く作っていただきたいと。農水省さんの方にも、統計局の方の問題もあると思うんですけれども、プッシュしていただきたいと思いますが。
 実は今、供給、生産が非常に増やしていくのが難しい状況の中で、輸出の量だけ増やしていこうと思えば、考えていただきたいんですけれども、外から物を買ってきて加工品作るというのはこれは当然なんですよね。ですから、リニアにいわゆるその割合が伸びるとはとてもじゃないけど考えられないので、やっぱり私は、一兆円の輸出ということも分かりやすくていいんですけれども、国内のそれによって生産がどれぐらい絶対額として伸びるのか、この辺りを今後議論していっていただきたいと、こういうふうに思っております。
 時間がなくなりましたので、最後、まとめを一回行きたいと思いますけれども。
 非常に貿易するというのは大事なんですが、例えば花の花卉類も輸入割合が二五%だったり、木材も七一%が輸入だったりします。にもかかわらず、これを輸出産業に育てていこうという議論もあるんですが、私は国内をもうちょっと需要市場として大事にするということもあると思っていますので、その辺りも含めて、しっかり骨太、それから、要はいろんな政策をもう一度内閣も挙げてつくっていっていただきたい、こう思っております。
 以上で終わります。ありがとうございました。

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