2013.3.8

旭川・札幌視察で考える日本の農政

2013年3月2日(土)~4日(月)にかけて北海道の旭川と札幌に視察に行って参りました。北海道の農業の現状と課題、それらに対する解決策を10箇所20名以上の方とディスカッションして参りましたので、視察で考える日本の農政と題してご報告します。

○猫の目農政

これはほとんどの方からお伺いしました。農業には土作りや各種投資がありますので、5年や10年といった長いスパンで考えなければいけないものなのです。ところが日本の農政は「猫の目農政」と言われていてやることがすぐにかわってしまうのです。投資をおこなうにもリスクが大きすぎますし、なによりも、「あるべき農政像」にたどり着くまでの道が長くなってしまいます。あるべき農政の全体像を定義した上で、そこにむけたロードマップを引き、長期のスパンでの基本的な考え方を定義していくことが必要であると考えます。例えば、

  • 将来的には農業は自由な競争を是とするが、表示等公平なるプラットフォームを構築する
  • 農家保護は全ての品目を戸別所得補償制度に一本化するが、15年後までに段階的に撤廃する

といったコンセプトをあるべき農政像にたどり着くまでの施策として提示していくべきです。

○土地改良

土地改良については、特に今回認識を新たにした部分です。土地にはいろいろな種類があることは知っていましたが、その土地の土の特性によって育てられる作物が大幅に制限されたり、収量に大きな影響を与える要因になるということを再認識しました。そういった意味で、土地改良は農業をやっていく上で非常に重要ですが、「猫の目農政」が理由で投資が難しい環境になっているのです。特にグリーンテックスさんで聞いた、土地診断からの土地改良の具体的提案までの一連の流れで、通常は5~6年かかるような土地改良が場合によっては1年で済んでしまうといった技術などは、広く広めて日本の農業の生産性を高める一助にしていくべきだと考えています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

土地改良した土地で取れた美味しいニンニクはこちらから

○土地売買とゾーニング

山田太郎としては株式会社による農地の売買を原則自由化していこうという考え方を持っています。この点についても皆さんと議論してきました。一つの事例として、土地をリースで借りて何百万円かをかけて土地改良を行ったのですが、持ち主に減反政策の変更に伴い土地の返却を要求され返したというお話も聞きました。リースでは、こういったことを考えるとなかなか長期の視点で投資ができなくなってしまいます。長期での投資を促すためにも土地の売買を認めていくことが大事なのではないでしょうか。ただ、同時に農地転用の話がつきまといます。その際、ゾーニングを厳しくするだけでは、農地の隣に小さなカフェを作ろうといったニーズに応えられなくなってしまいます。優良田園住宅の促進等も含めて、ここは工夫が必要です。ただ同時に、もうだれも住んでいない宅地が農家の真ん中にあっても農地転用できず農地集約の阻害となっているという事例も聞きました。こういった発展を阻害するような規制は即刻排除していきたいと思います。誰にも迷惑をかけずに発展に寄与することなのですから。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

○TPPと公正な競争

安住さんに紹介頂いたこともあって、今回お会いした方の多くはTPPについての賛否は賛成もしくはフラットという方が多かったです。ただし、TPPの前提として公正な競争を行える環境を作ることが大事であるとのご指摘も頂いています。例えば、「国産米粉100%のパン」という表示を見て、皆さんどのように思うでしょうか。この商品が99%の米国小麦と1%の国産米粉でできていたとしたら、私たちは騙されたと思うのではないでしょうか。消費者の立場に立ったとき、表示されているものが本当に正しいのかについて調べることは事実上不可能です。TPPが批准され海外から農林水産物が輸入されてきた場合、私たちは産地表示にさらに敏感になるでしょうから、この、表示が正しいということは、公正な競争をおこなう上で非常に大切なことであると感じました。そして、表示が厳格化されることで、国産であることの付加価値が更に高まるので、むしろTPP歓迎という方が多かったのは非常に頼もしい限りです。

○食糧安保と食育

ちまたでは「食料自給率を上げるために・・・」とか「食料安保の観点から・・・」といった議論が多くなされています。食糧自給率の嘘については、また別の機会で触れようと思いますが、仮に、戦争が起こり食料が輸入できない事態になった場合、原油も輸入できなくなってしまうのではないでしょうか。原油がなければ産地でトラクターを動かすことも、消費地までトラックで運ぶこともできません。そう考えると、いざという場合には、身近な土地で自分の食料ぐらいはまかなえるようになるのが、食糧安保の究極的なゴールなのかもしれません。今の都会の小学生たちは、稲がどのように育つか知らないそうです。小学生の農林水産業体験を義務づけるなど、食育や今のグリーンツーリズム(農村体験)のようなことをもっと広く行っていくべきなのではないでしょうか。それが、究極的な食料安保に繋がっていくと考えます。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

○新規就農

新規就農については、農水省でもいくつか施策を持っていますが、現場レベルでヒアリングすると驚くべき実体があることが分かりました。一つ聞いた話では、ある方が新規に農家となり、農協を通じて土地を斡旋してもらったところ、結果的に作物が全然育たなかったということです。後で分かったところによると、そこの土地は農業には向かない土地で、誰がやってもうまく行かない土地であったとのことです。既存の農家が生産している良い土地を新規就農者に渡せないことは分かっていますが、例えば、土地改良をした上で新規就農してもらうといった施策が今後重要になっていくのでは無いでしょうか。農家の高齢化は待ったなしに進行しています。今のうちに後継者や新規就農の若い人たちを育てて行かないと、TPP以前に国の農業が立ちゆかなくなってしまいます。

○6次産業化

6次産業化とは、1次産業が2次産業および3次産業に進出することで(1+2+3=6)、さらなる付加価値をつけ、1次産業者の発展につなげていこうという考え方です。ここでのポイントは1次産業者主体となるという点です。3次産業である流通や外食等の大手のチェーンが主体となりこの事業を進めていくのでは、当初の目的であった1次産業の発展=1次産業者の所得向上につながっていきません。この点のチェックは厳しく見ていかなければならないと思います。そして、特に過疎が進んでいるエリアなどでは、この加工および販売の主体が農協になることが最適になるケースもあるかもしれません。農協は農民の共同事業体であるという原点に帰れば、そういった取り組みは間違いでは無いと思います。農協は全て悪な訳ではないですし、実際に地域経済の中の重要な担い手となっています。この点は具体的な内容を検討していきたと考えています。

また、今農水省がすすめている6次産業化ファンドについても、様々なご意見を頂いてきました。この点については、まとめていますので、別途ご報告致します。理念についてはすばらしいと感じていますが、いくつか問題がありそうです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

JAが運営しているショップ。地産地消を推進しています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

豚の生産→加工→販売までを一連でされているすぎもとファームさん
ハムはこちらから

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

請川さんが自分の畑で取れた食材提供するために作られたお店です
旭川での美味しいご飯はこちらから

米粉パスタ_mini

小麦粉アレルギーの方も食べられる世界唯一の米粉パスタ
米粉製品はこちらから

○最後に

今回、旭川に行って皆さん非常にリベラルで本当に前向きに頑張っていらっしゃる方ばかりだと感じました。旭川という土地は米を中心に多様な農作物が取れる土地で、東京との直行便も多く、知名度も高いといった多くの成功要素を備えた町だと思います。一つでも多くの成功事例を世の中に出していくことで、日本の農林水産関係者の見本となってほしいと思いました。最後に、今回の行程はみんなの党北海道支部長の安住太伸さんに多くをアレンジしていただきました。前向きな方からの多くの示唆を頂くことができました。今回の視察を政策に生かして行きます。ありがとうございました。