2022.4.1
再評価率とマクロ経済スライドについて
再評価率とマクロ経済スライドについて
基礎年金および厚生年金の受給額は、物価や賃金の変動に応じて毎年度改定されることになっています。
基礎年金では、物価変動率や賃金変動率などから算出された改定率を前年度の年金額に乗じることで、その時々の経済情勢に応じた年金額に改められる仕組みとなっています。
一方、厚生年金では基礎年金と少し違った仕組みで年金額が改定されています。厚生年金は、定率の保険料(従業員は9.15%)が毎月の給料から天引きされることになっていますが、数十年前の賃金・物価水準が低い時代(例えば大卒初任給が10万円程度だった時代)に納めた保険料をもとに額面通り受給額を計算すると、現代の物価・賃金水準と比較して低い額面の年金しかもらえないことになってしまいます。そこで、厚生年金においては、再評価率という、物価と賃金に応じて適正な価格に調整する係数を用いて、ある年の給与が今だったらどのくらいの給与に当たるのか評価し直すことで、適正な額の厚生年金を受け取れるようにしています。この再評価率を毎年度改定することで、厚生年金の受給額も毎年度改定される仕組みとなっています。
※なお、上記は新たに年金を受け取る場合(新規裁定時)の説明です。
一方、改定に当たっては、現役世代の減少及び平均余命の伸長を考慮し、物価や賃金の変動をそのまま反映するのではなく、一定期間、年金額の伸びを調整する仕組みを導入しています。この仕組みを「マクロ経済スライド」といいます。2004年の年金法改正では、こうした仕組みなどを導入することで、長期にわたる年金財政の安定が確保できることになりました。
将来の年金額をシミュレーションする上では、以上で説明したような年金額の改定率や再評価率、また「マクロ経済スライド」の発動状況を将来にわたって仮定する必要がありますが、そのためには人口変動や経済状況等に関して一定の前提を置く必要があります。
厚生労働省では、「マクロ経済スライド」などの仕組みがきちんと機能し、公的年金制度が持続可能なものとなっているかどうかを検証するため、5年に1度「財政検証」と呼ばれる試算を行っています。「財政検証」は、人口や経済等に関して現時点で得られるデータを一定のシナリオに基づき将来の年金財政へプロジェクション(投影)するという性格を持っており、実施にあたって複数ケースの前提を設定しています。山田太郎事務所の年金アプリでは、公的年金の将来について不安をお持ちの方が多いのではないかとの想定の下、あえて厳しい経済前提(2019年財政検証ケースⅤ、出生中位・死亡中位)をシミュレーションのベースとして用いています。
<年金制度改正法が2020年に成立>
2020年5月29 日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、同年6月5日に公布されました。この法律は、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれる中で、今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るためのものです。
山田太郎事務所の年金アプリは、改正法の施行前の前提に基づいています。