2020.5.22
障がい者所得倍増議員連盟が開催されました
5月14日、超党派議連「障がい者の自立のために所得向上をめざす議員連盟」(略称:障がい者所得倍増議連)が開催されました。私は今回、この議連の事務局長次長として司会を務めました。
現在、新型コロナウイルス感染症の影響で障がい者が働く事業所の、特にB型(※1)の工賃が安くなっています。新型コロナの影響がない平時の場合でも障がい者一人あたりの平均工賃は15,000円です。ただでさえ安い工賃が、コロナ感染症の影響で、更に下がっているというのです。
(※1)B型とは、就労継続支援B型事業所のことで、障がいや難病のある方のうち、年齢や体力などの理由から、企業等で雇用契約を結んで働くことが困難な方が、軽作業などの就労訓練を行うことができる福祉サービスです。(以下の図を参照)
出典)厚生労働省「障がい者の就労支援について」平成27年
なぜ安い仕事を受けても事業所が成り立つのかというと、それぞれの就労支援事業所は、極端なこといえば、何人の障がい者の人たちが所属しているかということで国から支援金をもらっているからです。中には、障がい者に少しでも高い収入を渡そうと一生懸命やっている就労事業所もありますが、実際の工賃はいくらでも、事業所には関係ないので、なかなか一人一人の工賃を上げていこうというインセンティブが働きません。その割をくうのは障がい者なのです。
そして、工賃が上がらない原因に、工賃の高い仕事を取ってくる力がないということが挙げられます。現在の障がい者事業所の仕事受注のスキームは、各都道府県に共同受注窓口があり、各都道府県の役所でおこなっています。この共同受注窓口に非常に営業力がないのです。
それを改善し、工賃をあげようというプロジェクトが、鳥取県と日本財団で行われました。このプロジェクトによって、2015年から、障害者の福祉就労における工賃が全国一の伸び率、また全国唯一の千円単位の上昇(鳥取県:1,143円、全国平均:308円)という成果を得たそうです。今後その手法を全国に広げていくための新たなプロジェクト「400億円センター」について、日本財団から説明を聞きました。
このプロジェクトは、日本財団が窓口になって、色々な企業からPC系の入力や、内職系のセッティング、それから清掃系などの高い工賃の仕事をとってくるというものです。これまで、企業は軽作業を中国などに依頼するスキームがありましたが、中国での労働者の賃金は高くなってきています。そのような軽作業は、授産施設でも十分できるということが鳥取県での実験で分かったそうです。
400億円センターの400億という数字は、企業の軽作業が400億の規模で需要があることがわかり、400億分の仕事を受注できれば、障がい者の工賃は倍にできるとの計算です。少なくとも生活保護から脱却する人が、年間数千人という数字を目指していくということです。
議員連盟の方でも、最初は日本財団の力を使い、最終的にはこの共同受注窓口が自立していくというようなスキームでできないかということで、障がい者の人たちの1人当たりの工賃を高めていく、その営業活動をサポートする枠組みをつくっていきたいと思います。加えて、今回緊急で財務大臣と厚労大臣に対して、コロナの影響で工賃が下がっていることに対して、なんとか底上げができないかと、議連から緊急の要望書を出しました。
一方で、特別支援学校は今回のコロナ感染症で閉校余儀なくされています。現場の特別支援学校の先生方にもヒアリングをしましたが、先生方からは、障がい者への家庭内での暴力が増加する懸念や、卒業後の就労への心配の声があがりました。閉校中の家庭内での暴力の場合、一番実情を知っている文科省は家庭内のことは関係ない、内閣府は配偶者暴力については所管だが、子どもの虐待については厚労省だということで、虐待の問題があった場合に、縦割りになってしまって具体的な担当がわかりいくいという現状もあります。
働く障がい者の賃金を上げることができれば、家庭の中での地位が確立することで家庭内でのトラブルが減少し、さらに賃金を倍増できれば生活保護を抜け出し、税金を払う立場になっていきます。それが健全な立場であり、社会コストを下げることにもつながります。コロナ感染症で影響を受けている障がい者の働く現場の現状をなんとか改善すると同時に、特別支援学校に通う子どもたちの就労が円滑に進むよう、引き続き後押ししていきたいと思います。