2023.1.18

視察報告⑦イギリス(こども・若者政策)いじめ対策編

 英国の非営利団体のいじめ対策に関して現場の視察を予定していましたが、エリザベス2世女王崩御のために当日にキャンセルとなりました。在英大使館の方が後日視察に行ってくださり報告をもらいました。

Anti-Bullying Alliance(ABA)という団体についてです。ABAは、2002年にNSPCC(National Society for the Prevention of Cruelty to Children)(英国で虐待された子どもの保護などに取り組む慈善団体)、National Children’s Bureau(英国で児童福祉に取り組む慈善団体)により創設された団体です。現在、National Children‘s Bureauにより運営されています。 英・教育省・いじめ対策の重要な助成金受領団体です。

■活動の概要

教育省では、2017年のガイダンスや、2018年の学校のCase studyなど、近年、いじめ防止に関するいくつかのレポートを発表してきました。そして、教育省は、現在、5つのいじめ防止に取り組む団体に資金を提供しています。そのうちの一つがABAです。

 教育省は、こうした組織と定期的なミーティングを行っており、特に、National Children’s Bureauは、あらゆるセクターを超えて活動しており、全ての意見を反映し、政府に問題の全体像を提供しています。

ABAは、主に①campaigns、②practice improvement、③policyの3つに焦点を当てており、主にオンラインで活動しています。

具体的な活動として、毎年11月に、Anti-Bullying Weekを実施し、80%を超える学校の参加を得ています。このキャンペーンでは、「Odd socks day」や募金活動、ディベートなど、様々な活動が行われています。

  特に、「Odd socks day」は、同Weekの1日(今年は11月16日)に、左右で別の靴下をはいてくる、という興味深いキャンペーンです。この日は、活動に共感している著名人や閣僚も、左右で別の靴下をはいてきます「人と違うことはおかしいことではない」というメッセージであり、子どもにとっても受け入れやすく、お勧めしたい活動だと教えていただきました。同Weekの活動資金は複雑だが、商品販売、募金活動、企業スポンサーからの資金等によって賄われているそうです。

また、現在、2021年から2024年まで実施されるUnited Against Bullying (UAB) programmeという活動に取り組んでいます。このプログラムは、教育省から資金提供されており、参加は無料です。このプログラムは、学校全体(生徒、保護者、教師、スタッフ、組織等)に焦点を当てた、オンライン・トレーニング・プラットフォームです。参加した学校は、360°監査・行動計画策定ツールや、オンラインの生徒アンケート、保護者との情報交換ツール等を利用することが可能になります。参加した学校は、これらのツールを利用して、

  ・ Step1(Plan)、ベースライン監査、生徒アンケート

   ・ Step2(Do)、行動計画策定

   ・ Step3(Review)、最終監査、生徒アンケート

を実施します。それぞれの進捗に応じて、銅、銀、金のABAのロゴが付与される仕組みです。これにより、学校として「いじめ対策に取り組んでいる」ことをオフステッド監査の際に証明できます。また、オンラインで実施される本プログラムから得られたデータは、分析され、政策立案に活用されます。

■ABAの体制

ABAのスタッフは5人程度。5人で、全ての業務を行っているわけではなく、プロジェクトに応じて、様々な外部組織と連携しています。

例えば、何らかのツールの作成が必要であれば、中身を検討した上で、外部の業者と連携するし、データ分析等の政策的な内容は、大学と連携してアドバイスを得ています。なお、ABAのプログラムの質の評価・保証を行っているのは、University of LondonのPeter Smith教授で、世界中で、多くの優れたいじめの研究を行っている方です。運営元のNCBについては、全国にスタッフがおり、100人以上の規模だそうです。

国全体でしっかりといじめ対策に取り組む姿勢について大変感動しました。日本でもこどものいじめを減らし、早期発見をし再発防止をするためのあらゆる策を講じてまいります。