2016.3.18
障がい者雇用先進企業=皆働(かいどう)社会を目指す、「日本理化学工業」訪問【第81回山田太郎ボイス】
私が3月7日の参議院予算委員会質疑の中でも「障がい者雇用先進企業」として紹介をした、チョーク製造会社の日本理化学工業社に訪問しました。
学校の授業等で使っているチョークの国内シェアトップである同社は、従業員の7割が知的障がい者で、うち半数以上が重度の障がいを持っているそうです。看板商品であるチョークの製造ラインはわずか13名で、その全員が障がいを持っているそうですが、なんと1日10万本のチョークを作り上げています。
日本理化学工業社の障がい者雇用は、近所の養護学校の先生の「生徒が就職できないと施設で一生過ごすことになってしまう」という言葉に、当時専務であった大山会長が採用を決定して、昭和35年に2名のからスタートました。「当初は同情からだったが、現在は貴重な大戦力である」と大山会長が話してくれました。
実際に製造ラインを見せて頂くと、皆黙々と各自に割り振られた作業を進め、次々と箱詰めが完了したチョークの箱が積み上げられていきます。手作業で進める彼らの手元を見ていると、作業の手を止めて、笑顔で挨拶をしてくれ、自らの作業を説明してくれました。製造ラインの各工程には、さまざまな工夫がされています。色の判断はそれぞれの色の材料袋と同じ色の缶を用意、時間を図るのは砂時計、重量の図るのは同じ色のついたおもりと秤を使用、計測はオリジナルの計測盤や計測工具を使用等、理解力に合わせて全行程を見直し、工場全体に変えたそうです。
「その子に合わせた仕事を与える、理解力に合わせた段取りを会社が与える」、そして「日本の職人文化が福祉の一端を担っている」と大山会長の言葉が印象的でした。
また、各工程には「班長」がいて、彼らが中心となり、グループをまとめて作業を進め、業務報告も担当しています。「班長になりたい」という目標ともなり、職務へのモチベーション向上にもなっているそうです。
そして、2009年に渋沢栄一賞を受賞した際、「なぜ理化学工業が?」と聞いたところ、その理由は、障がい者雇用が経済的な貢献になっているという回答だったそうです。福祉施設で成人の生涯にかかる費用は1人2億円ともいうが、理化学工業社は、障がいを持った人でも多くの人を受け入れて雇用し、給与も与え、彼らを自立させています。
働くことは苦役ではなく、人の役に立って、働くことに幸せを感じること、「皆働(かいどう)社会実現」を目指す。そして、養護学校を卒業後、ダイレクトに就職させて働く場を提供する「直行便制度」を広げたいという大山会長。「早く社会に出て働きたい」と思う彼らにとって、最適な場所だと思います。
こういった企業を支えていく一つとして、予算委員会質疑のなかでも障がい者雇用支援「ハートフルポイント制度」を提案しました。障がい者雇用に関しては、業種業態により、企業が障がい者を雇うのが、合う・合わない、整っている・整っていない、とわかれてしまう現実があります。しかし、現在法律では一律2%の法定雇用率を設けています。その法定雇用率順守の為に、障がい者を雇うのが合わないのに無理に雇用をしても、雇用する側もされる側も互いによい結果を生みません。
この仕組みは、障がい者が提供する商品やサービスを、法定雇用率が不足している企業が購入するとポイントが付与され、そのポイントが不足している法定雇用率の計算に考慮される制度です。障がい者が働くことが整っている環境である業種・業態の職種の会社は製品やサービスの提供に力を入れ、製品やサービスが売れることにより、売上も上がり、より障がい者の雇用や賃金上昇に積極的に対応ができます。また、障がい者には厳しい職種・職場環境の企業は、それらの製品やサービスを購入することで、障がい者の雇用を間接的に支えることができるのです。直接給与給付という公助の仕組みから、社会の力で皆がサポートしていく共助の仕組みにもっていくことができます。
障がい者雇用を積極的な先進企業にとっても、企業単体だけの努力で、障がい者雇用を続け、売上を上げていくというのも限界があります。また、機械化や大量生産に即対応できる大手競合他社参入のリスクからも、守らなくてはなりません。そういった企業を、社会全体で支えていくのが、「ハートフルポイント制度」だと考えます。この制度導入実現に向けて、継続して活動していきます。