2021.6.21

待機児童問題は学童保育問題へ!今こそ放課後支援が必要

6月14日、私(山田太郎)が共同事務局を務める「第19回のChildren First の行政のあり方勉強会」を開催しました。

今回は、「子どもの成長のための外あそび推進」について、平岩国泰さん(特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクール 代表理事)、前橋明教授(早稲田大学人間科学学術院 教授)から講演いただきました。アフタースクールの重要性と、多くの保護者を悩ませる「小1の壁(小4の壁)」を解決するためには何が必要か、「こども庁」の議論にも非常に重要な提言がありました。

また、小倉 將信衆議院議員から「子どもの健全な成長のための外あそび推進勉強会」で取りまとめられた提言の説明がありました。小倉議員はこれまで、子どもの成長のための外遊び推進の勉強会を主催しており、私もメンバーに加えていただきました。

写真)平岩国泰さん(特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクール 代表理事)

写真)前橋明教授(早稲田大学人間科学学術院 教授)

■外遊びが激減した「放課後の過ごし方」

現在の子どもの放課後の過ごし方は、昭和時代から大きく変化しています。昭和時代の遊びの中心は公園で、駄菓子屋にいったり、秘密基地をつくったり、地域で子どもが育つ環境がありました。しかし、2000年代に入ってから、下校途中や放課後を狙った子どもが襲われる事件が相次いだことを機に放課後の外遊びの空間は奪われ、自宅で過ご子ども達が増えていきました

図)「子どもの犯罪発生時間帯(2018年千葉県警察調べ)」14時から18時に集中していることがわかる。
提供)放課後NPOアフタースクール

図)「放課後の過ごし方(小学生)」1位は男女ともに「自宅」
提供)放課後NPOアフタースクール

■待機児童問題は学童保育問題へ

 また、共働き家庭やひとり親家庭が急増したということも昭和時代から大きく変化したことのひとつです。しかし、小学校の子どもを預かる学童保育の不足によって仕事と家庭の両立が困難になる「小1の壁」は、多くの保護者を悩ませています。また、学童保育は事実上小学校3年生までとなり4年生以降の居場所を失う「小4の壁」という問題もあります。都心の場合は、多くが学習塾などに吸収されます。

下図は、保育園の待機児童数と学童保育の待機児童数です。学童保育の待機児童は2015年に急増し、2019年には学童保育の待機児童が保育園の待機児童を超えました。学童保育には元々諦めて申し込まない保護者も多いため、潜在的には30-40万人いると言われています。世間では、待機児童ばかりが注目されていますが、学童保育の待機児童の解消は早急に政治で取り組むべき課題です。


提供)放課後NPOアフタースクール

■自己肯定感が低い日本の子どもたち

これまでの勉強会でも言及(心理的な健康37位、その原因とは?)がありましたが、日本の子ども達は自己肯定感が低く、孤独感を感じやすく、コミュニケーションが不足しています。自分は価値のある人間だと思う「8%」[1](米国57%、中国42%、韓国20%)、孤独を感じることがある「29.8%」[2]調査国25か国中最多、2位のアイルランドの約3倍)、放課後に週に2日以上に一人で過ごす「41%」[3](英国18%、ドイツ21%、韓国28%)といった数字が並んでいます。

図)日本の子ども達の心の課題
提供)放課後NPOアフタースクール

また、小1までは高い自己肯定感が、小3と中1で大きく下がる傾向があることがわかっています。つまり、小学校に上がってからの自己肯定感を下げることなくどのように保っていくか、といことが重要です。そのためには「放課後の過ごし方」がカギになります。

提供)放課後NPOアフタースクール

■放課後の価値

放課後や長期休み(1600時間/年)は、学校にいる時間(1200時間/年)よりも長くあります。そして、自分で過ごし方を決め、好きなことに夢中になったり、社会とつながったり多くの仲間とつながることができる価値があります。

平岩さんの放課後NPOアフタースクールでは、放課後を活用し、子ども達に放課後の活躍の場を提供しています。特徴は、①学校で開催し、②いつでもだれでも受け入れ、③市民先生のプログラムという3つで、毎日500以上の多様なプログラムが開催されているそうです。これらは、すべて設備が整っている学校の空き教室(体育館、理科室、調理室、音楽室、グラウンド等)で開催することで、安全で低コストかつ、質の高いプログラムになっています。

素晴らしい取り組みによって、子どもたちが夢中になる姿にとても感動しました。このように授業では体験できない経験や仲間の存在が自己肯定感の向上にも大きく影響するでしょう。

提供)放課後NPOアフタースクール

提供)放課後NPOアフタースクール

■こども庁で推進すべきこと

共働き家庭を対象とした放課後児童クラブ(厚労省)か、そうでない放課後子ども教室(文科省)かに限らず「好きな友達と一緒に遊びたい」という子どもたちの願いを叶えなければなりません。そして、「子育てと仕事の両立のため」にも小学生の放課後の支援が必要です。

2018年に『新放課後子ども総合プラン』が示されたことで、国としては学校活用の方向性は明確にでているものの「学校は先生のもの」という占有意識が強く、学校や、教育委員会は放課後の学校活用に消極的です。現場が動かない理由は予算不足も大きな要因で、そこは政治が変えていかなくてはいけません。一元的な組織をもって予算を獲得し、縦割りを排して学校活用を徹底させる政策を推進、運営力のある組織の育成をする体制が必要です。

今後も「こども庁」の議論の中で、重要な取り組みのひとつとして、外遊び、放課後の過ごし方を取り上げていきます。そして、DBS やCDRしかり他省庁にまたがる子ども施策を、現場と連携しながらしっかりと前に進めて参ります!

提供)放課後NPOアフタースクール


写真)冒頭の挨拶をする私(山田太郎)、共同事務局を務める自見はなこ参議院議員(左)

[1] 日本青少年研究所「高校生調査」

[2] ユニセフ「子どもの幸福度調査」2020

[3] 明石要一他「児童の放課後活動の国際比較」2012