2014.4.11
国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会にて質疑を行いました。
4月9日、参議院国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会にて質疑を行いました。
議事録
○山田太郎君
みんなの党の山田太郎でございます。
山下先生、小幡先生、以前からお世話になっておりまして、またお会いできるのは光栄でございます。岩本先生も今日はありがとうございます。
まず、小幡先生からお伺いしていきたいと思いますが、この調査会を通じて私も最近感じるのは、デフレのときはこういうふうにしてデフレが問題だと言い、インフレのときは多分インフレが問題だと言うと。とどのつまり、もしかしたら物価と賃金が合っていないんじゃないかなと。
今のデフレ、先ほどの小幡先生の話によれば、物価の下がり方というのは小さいと、一方、賃金というのは下がってきちゃったという中で、このバランスの問題なのかもしれないと。インフレの場合は逆もありきでありまして、物の値段が急激に上がって賃金が追い付いていかないと。この差が結局、政治的には人の問題になってきますので、大きな結果として見えてくるんではないかと。
そうなってくると、ちょっと突っ込んで、じゃ、何でデフレ調査会がと言われちゃうかもしれないんですけれども、必ずしもデフレが悪いことなのかどうかというのは、だんだん調査会を参加していて分からなくなっちゃったところがありまして、その辺を少し解いていく必要があるのかなと。そう考えると、賃金だけの問題でもない、物価だけの問題でもないというようなところで少し御意見をいただければなと。逆に言うと、もしかしたら物価がうまくスライドしていない。これ、よく、私も経済学やっていましたので、価格の下方硬直性というのもあるかもしれませんし、もしかしたらいろんな方々がいろいろいて物価を下げないようにしているのかもしれないと、こういうこともあるかもしれませんが、ちょっとその辺のメカニズムを教えてもらえればなと思っています。
もう一つ小幡先生に、二点目お伺いしたいのが、人材の観点でもって賃金が上がらないということですが、若年の労働者というのは完全に減ってきているわけだと思います。そうなってくるとそれは貴重になってくるから、逆に言うと、賃金は上げないと人が足りないということになるのかどうか。バランスも崩れてくれば生産性も高めなきゃいけないということですが、私も小幡先生と同じように実は大学の教官、先月まで十四年間、東大でゼミを持ったりとかですね、東工大で教授やったりして教えてきたんですが、一番変わらないのは大学でありまして、十年間カリキュラムが変わらないのが東大だったんですけれども、そこから出てきた学生が今までのいわゆる学生よりもはるかに生産性が高いことができるような人材輩出の構造には決してなっていないと思っているんですけれども、その辺り、是非ちょっと、その人材が減っていく、労働生産性が減っていく中で、実は賃金というのはどう関係していくのか、その辺りを教えていただきたいと思います。
時間がなくなるといけないので、質問を全部先にやりたいと思うんですが。今度山下さんには一つお伺いしたいのが、農政、二・二兆円ものお金を農水省、予算で付けています。私も政治家になってびっくりしたのは、経済産業省というのはこれだけ中小企業を支えているにもかかわらず、予算がどれぐらいかなと思って見たら八千億円ぐらいで、うちエネ庁が四、五千億ですから、政策投資予算って三千億円ぐらいしかないんですよね。農業に二・二兆掛けていて、これだけ人口で中小企業が七割、八割だと言っておいて、そこに三千億円ぐらい、もちろん補正で今回三千億掛けたんで結構ですけれども、足しても一兆以下なんですね。アンバランスではないかなというのは非常に思うことがよくありまして、これはやはり財政再建という観点からいくと、適正規模があるのかもしれないと。ただ一方で、自給率向上のためにお金は必要なんだよという議論が続いちゃっているんですが、どの辺が落としどころなのかということが、私も農林水産委員会等を含めてやってきてさっぱり分からなくなってきたところもありまして、元農政官僚だということもありますので、その辺の話をひとつ教えていただければなと。ちょっとマクロでアバウトな話になるかもしれませんが、お願いします。
岩本さんには、今ちょうどOECDのグリア事務総長が来ていらっしゃいまして、新聞報道なんかでも大きく伝えられていますが、彼は、消費税、日本は一五%以上にするべきだと、法人税を下げてということで、目標は、安倍さんも第四の矢、つまり財政再建をもっと積極的にやるべきだと、こういう論でかなり言っていらっしゃいまして、昨日も懇親会があって私も出させていただきましたし、今日もあるみたいで行ってきますけれども、OECDなんかはそういう発想。
何となく、彼はメキシコ人ではあるんですけどヨーロッパ的な発想なのかなというふうには確かに思いまして、この辺は大塚さんの方も質問をされていたと思いますが、考え方がそもそも違うのかどうか。西田さんもいて、まあ西田さんは多分大きな政府ということで、政府の範囲をということですが、私は立場違っていて、小さな政府ということで、その辺は違うんですけれども、欧州型それから米国型というのはあるのかどうか、その辺りでの論争なのかどうか、いや、そうじゃないんだよというような話、ちょっとその辺が分かればなと思って質問させていただきたいと思います。
以上です。
○参考人(小幡績君)
山田先生、ありがとうございます。
前半部分は私の今日のメッセージの一番のポイントの一つなので、ちょっと繰り返しにもなりますがお答えすると、やはり物価は消費者物価なので、買うものの値段、これはやっぱりエネルギーを含めて輸入のものがどんどんウエートが上がっていきます。それで、円安が進み、あるいはエネルギー価格が上がる中で、いわゆる交易条件が悪化して買えるものが減っていったと。
その一方で、輸出するものは昔と、相も変わらずと言ってはあれなんですが、半分は同じようなもので、競争が激しくなれば更にコストダウンをして頑張ろうとする。そうすると、付加価値を上げずに同じような土俵で価格で勝負したものを維持している以上、どこで調節するかというと、賃金を下げざるを得ないと。つまり、生産サイドの競争構造をそのまま反映したのが賃金構造になってしまったと。これは輸出関連が中心になると思いますけれども、その結果、物価と賃金のギャップが出てきたと。
じゃ、どう解決するかというと、やはり労働力に付加価値を高めて付加価値の高い製品を作る。まあまあ、先に付加価値の高い製品を作ってそれに応じた労働力ということかもしれませんが、いずれにせよ、付加価値を高めるということに尽きるということだと思います。
ですから、デフレ自体は賃金が上がっていればむしろ歓迎すべきことですから問題ないと。問題は、賃金がそういうふうにどんどん弱くなっていって、だけど物の値段がそんなに下がらない、そうすると買えないからますます需要も減って、そこから更に物価が下がると、この循環が悪い形のデフレとして起きてきて批判されてきたのだと思います。
人材は、初等教育の方が私はより重要だと思いますけれども、長期的視野でやっぱり大学を含め教育機関を立て直す必要はあると思います。ただ、そこ即戦力というよりはもっと深いもので、応用力といいますか、現場に一回連れてきたときにそこで吸収する力、好奇心や伸びる力ですね、それを蓄えるためのものだと思いますので、必ずしも実践力、あしたから使えるものを学校で身に付けさせるというのは、むしろ企業の現場でやった方が効果的だと思いますので、それに堪え得る好奇心とか柔軟性とか、そういうものを学校で、もっと深いもの、教養を含めてやるべきだというふうに思っています。
以上です。
○参考人(山下一仁君)
私も昔、農水省の予算と経産省の予算を比べてみて、とんでもない差があるなというふうに思ったんですけれども、額の問題というよりは、農林省の予算がどういうふうに使われているかというのが重要だと思います。実は、私も農水省で課長をやっていたときに、自分の課の予算もなかなか理解できない、隣の課の予算だと全く理解できないわけですね。つまり、細かい予算がぐじゃぐじゃぐじゃぐじゃあって、本当に果たしてそれが役に立っているのかというのが全く分からない構造になっているというのが事実でございます。
それと、世界的に見ると、日本の場合には、先ほど図で示しましたように、消費者負担で農家を保護しているわけですね。アメリカやEUはもうほとんどが、九割ぐらいが財政で保護しているわけです。消費者負担は、価格で保護するというのは物すごく、一〇%ぐらいしかない。ところが、日本はあくまで八割もの負担が消費者負担、高い価格でやっているというところに大きな問題があるんだと思います。
それから予算自体についても、食料安全保障とか多面的機能というのは、これはいい概念なんです。じゃ、だけど、食料安全保障のために必要なのは農地面積です。多面的機能の働きというのはほとんどが水田の働きです。だけど、減反政策を四十年間やって、三百四十四万ヘクタール減反する前にあった水田面積が今は二百五十万ヘクタール、百万ヘクタールも少なくなっているわけですね。
これが果たして多面的機能を増進するための政策だったのか、それとも食料安全保障を確保するための政策だったのか、そういうふうなところを本当に、農林省は言っていることとやっていることが全く違うわけです。そういうふうなことをはっきり調べていく必要があるんだというふうに思います。
○参考人(岩本沙弓君)
OECDの会長が消費税一五%ぐらいというようなお話でございましたけれども、非常に厳密に言うと、先ほど来申し上げていますように、アメリカのタイプの小売売上税と日本のタイプの消費税は全く違うタイプの税制であると。それから、消費税と付加価値税も厳密に言うとちょっと違いがございまして、よく言われていることでありますけれども、例えば付加価値税というのは付加価値に付くわけですから、よく一般的に言われていますのは、チョコレートのクッキーの場合、チョコレートが乗っていないものと乗っているものでは付加価値税の掛かり方が違うとかということがあるかと思いますので、欧州の場合はあくまでも付加価値に掛かってくると。
間接税の場合は、もうこれは私が言うまでもないことなんですけれども、やはり逆累進性と言われているものが非常にきついものでございまして、消費税なんか最たるものですけれども、貧しい者にもそれから富裕層にも一律に課税掛かってしまって、これは差別じゃないかというか、非常にしんどいんじゃないかというような議論がありますけれども。例えば、その表面上は日本の消費税一〇%とか八%とか低いわけですけれども、直間比率で見た場合に、ちょっと正確な数字、失念してしまいましたけれども、今回のその八%、一〇%、恐らく一〇%になった段階では、多分、直間比率で言えば、かなり消費税というか間接税の比率が日本の場合は非常に高くなっていて、世界一になるんじゃないかなというふうに思いますので、そうすると、表面上の税率だけではなくて、一般国民にとって負担が大きいかどうかというところも併せて考えていく必要があるかなと思っております。
それから、食料品にゼロ%の軽減税率を入れているとかそういう国もございますし、私は別に消費税の中でゼロ%の食料品の軽減税率入れた方がいいと言っているわけではなくて、そうしますと、家に持って帰るものの食料品の場合はゼロ%、外で食べるものが例えば一〇%ということになって今後税率がどんどん広がっていきますと、例えば日本国内の飲食店なんかが、小売店、小規模な事業主さんなんかはどんどん潰れてしまうような可能性がありまして、今国内の雇用を確保しているのはそういった小さな店舗であったりするわけですから、やはり社会構造全体が変わっていってしまうというおそれがありますので、安易な軽減税率を全然推しているわけではないんですけれども、やはり多角的な見方、表面だけの税率の議論ではちょっと不十分ではないかなというふうに考えております。
○山田太郎君
ありがとうございました。