2016.7.7

政府が取るべき製造業戦略【第84回山田太郎ボイス】

山田太郎の製造業は高度な情報産業だ vol.11

私の参議院議員としての1期目の任期はこの7月で一旦終了する。振り返りの意味もこめて、日本政府の製造業戦略に対しての意見と、国会で私がどのような発言をし、実際にどう変わってきたのかについて触れていきたいと思う。

私が国会議員になり、はじめに驚いたのが、国会議員の製造業に対する理解の低さだ。製造業の労組出身の国会議員という人は存在するが、本当の意味で、製造業を産業として捉え、それを伸ばしこうと声高に主張している人は少ない。

エネルギーを海外から輸入するためには外貨獲得手段が必要だが、貿易輸出の9割を製造業が占めている。また、雇用面でいえば、日本の労働者の1,040万人(約2割)は直接製造業に従事しており、製造業に関連するサービス職などを含めればさらにその数は増える。また、GDPも2割弱を製造業が稼ぎ出しているし、それ以上に製造業は生産誘発額が高く、産業としての裾野が広いという事実も忘れてはならない。

しかしながら、私が国会で指摘して、日本のIndustry4.0に対して初めて予算が5億円がついたという状況だ。もちろん、予算の多寡が製造業に対する意気込みとは必ずしも一致する訳ではないが、あまりにも低すぎるのではと感じる。特に今の政府の予算はサービス業偏重しすぎている。サービス業に対して、製造業向けのものは極端に少ないという状況なのだ。

もう一つ、政権に対して強く訴えかけてきたのが、日本の製造業戦略についてだ。安倍政権ではこれまで、製造業の次世代戦略としてロボット活用ばかりを主張していた。もはや出荷台数でも稼働台数でも中国に抜かれている状況で、具体的にどうロボットを活用することで、日本の製造業を変えていくのかのビジョンが見えない。さらに言えば、ロボット化は基本的には省人化に直結するため、余った人材をどう活用するかとセットで考えなければならない命題のはずなのにそれは置き去りにされていた。

私は、基本的に政府が個別の産業の中身についてあれこれ口を出すべきではないと考えている。その上で、製造業向けに政府ができることは産業基盤の整備だと思っている。ビジネスを進めていく上で、根本的に付加価値とは関係ない部分、例えば、輸出産品の関税交渉であったり、IoTを進める上でのプラットフォームの整備などは政府でなければできないし、政府が役割を果たしていくべきなのだ。

これまで、日本の製造業は個別に世界で戦い、切磋琢磨をしてきた。そのため、政府はある程度放置をしていても、その状況にあぐらをかいていても、産業は育ってきた。しかし、今やドイツや中国をはじめとする世界各国が製造業を自国の産業として育てるために、例えばドイツでは年間280億円ほどの予算をつけるなど、政府主導の産業振興を行っている。

日本には製造業に対するグランドデザインがない。その基本となる技術ロードマップも私が経産大臣に指摘するまで、更新を怠ってきた。世界の状況や技術革新を考えれば5年後10年後は今とは全く違った製造業の世界があるだろう。政府はそれを見据えた上で、法改正や規制緩和、産業育成政策を進めなければならないし、民間はそれを参考に自らの強みを生かすための投資をしていくべきだ。

しかしながら、現在の経済産業省や内閣府の状況ではとてもそこまで考えているとは思えない。この製造業に光が当たらない状況の一つの理由が、冒頭に取り上げた、国会議員の製造業に対する認識の薄さであり、製造業に関する国会での議論の少なさでもあると感じている。

私は経営者時代、製造業の皆さんを顧客に持ちビジネスを行い、お陰様で上場まですることができた。その恩返しの意味も込めて、引き続き製造業を応援する国会議員として活動していくつもりだ。

(オートメーション新聞 7月6日号)

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