2023.4.5

決算委員会〜新サイバー犯罪条約・AI政策・デジタルアーカイブ政策・少子化対策・こども政策・花粉症対策〜(2023年4月3日)

〇山田太郎君 山田太郎です。よろしくお願いします。

表現の自由と新サイバー犯罪条約について

 まず、来年の国連総会での決議で新サイバー犯罪条約の交渉が行われています。その中で、日本の漫画とかアニメーションが規制で狙い撃ちとした案も出て懸念されていますが、外務大臣、新サイバー犯罪条約がどうなるかによって、表現の自由が失われ、日本の漫画、アニメ、ゲームが文化的にも産業的にも大きく後退せざるを得ない、衰退せざるを得ない、こういう懸念もあるんですが、政府としてはどのような立場で交渉に臨んでいるのか、御見解をいただきたいと思います。

〇国務大臣(林芳正君) このサイバー犯罪に関する新しい条約の作成に向けまして、二〇二二年の二月以降、国連において四回の交渉会合が行われてきております。

 政府として、今、山田議員からお尋ねのあった条約、これを各国から広く合意を得ることができる普遍的な内容にすることによって、世界全体でサイバー犯罪を防止して、対処する能力、これを高めて、自由、公正かつ安全なサイバー空間を確保することを目指すべきという、こうした立場で交渉に臨んできておるところでございます。

 また、サイバー犯罪に適切に対応するためには、国際的に協調した取組が重要でありますが、同時に、今お話のありました表現の自由等の人権、また基本的自由の確保、これも不可欠でありまして、まさに御指摘があったように、漫画、アニメ等の表現活動、これが不当に制限されることがあってはならないと考えております。

 このため、条約交渉の場において、法の支配、人権、こうした基本的価値を共有する諸国と協調しながら、我が国も積極的に議論に貢献し、我が国の立場を適切に主張してきているところでございます。

〇山田太郎君 岸田総理にもお伺いしたいと思います。

 この条約に当たって、表現の自由を失ってはならない、日本の漫画、アニメ、ゲームとか産業を守っていく、こういった基本方針を是非お願いしたいと思いますが、総理からもお願いします。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 漫画やアニメ等のこの表現活動の自由を含む表現の自由、これは憲法上保障される重要な権利であり、これが不当に制限されることというようなことはあってはならない、このように考えています。

 このお尋ねの新サイバー犯罪条約、二〇一九年に起草交渉が決定されて、今外務大臣からもありましたように、二〇二二年以降交渉が続いているわけですが、表現の自由を不当に制限するような内容とならないよう、この条約交渉の場において、我が国の立場、これを積極的に主張し、引き続き各国の理解や支持の獲得に努めてまいります。表現の自由、不当に制限されることがないよう条約交渉を進めていきたいと考えています。

〇山田太郎君 本当にとんでもない条約の内容であれば、署名しない、批准しないという強い意思で臨んでいただければと思います。

AIの光と影に対応した政策について

 さて、次に、AIが最近話題ですが、その光と影という辺りについても質疑させていただきたいと思います。

 昨年、文章生成系のチャットGPTなんかが、非常に自然な言語で人間的な回答ができて、世界中に大きなインパクトを与えています。ただ、このAI、生活に便利な部分も出てくると思いますが、様々な負の部分ですね、影の部分も昨今指摘されています。一つは、例えばフェイクニュースの拡散とか詐欺、サイバー犯罪に悪用される危険性と。

 例えば、アメリカの非営利団体のフューチャー・オブ・ザ・ライフ・インスティチュートは、高度なAIの出現で人類が文明を制御できなくなるおそれがあるなどして、半年は少なくとも開発を中断すべきなんではないかと、あるいは政府の介入なんかも訴えています。これに対して、起業家のイーロン・マスク氏やアップル創業者のスティーブ・ウォズニアック氏なんかも、そうだということを主張しております。

 一方、先月、三月の二十七日には、欧州刑事警察機構、ユーロポールが、大規模言語モデルが法執行に与える影響ということを発表しまして、サイバー犯罪急増のおそれを警告しています。さらに、三月三十一日には、イタリアのデータ保護当局が、データ収集に関する違反があるとしてチャットGPTの使用を一時禁止にすると、こんな発表もしているんですね。

 AIの負の部分、影の部分はまさにいろんな問題もあるんですが、一方で、大きな問題は、著作権法上の問題というのも大変大きな問題だというふうに思っています。

 そこで、総理にお伺いしたいと思いますが、画像生成や音楽生成、それから文章生成等のジェネレーティブ、生成系AIで、このAIの生成物の著作物性とか、一方、AI生成物による著作権侵害の成否とか、様々な著作権上の課題があると思うんですが、このAIの学習段階における著作物の利用の在り方についても問題視する声があると思いますが、この辺りの課題を把握されているかどうか、お答えいただければと思います。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 生成AIが急速に進歩し、そして普及する一方で、御指摘のように、どのようなAI生成物が著作物となるのか、あるいは著作権の侵害の疑いがあるAI生成物が大量に作成される、こうしたおそれがないかといった点や、著作物を学習用データとして利用するに当たり、著作権者の利益を不当に害することになるのはどのような場合か、こういった点など、AIとこの著作権制度との関係につき、まだ整理されていない課題があるという指摘については承知をしております。

〇山田太郎君 一方、海外では集団訴訟なんかも起こっています。画像生成AIの例えばミッドジャーニーですとかステーブルディフュージョンは、その学習用セットのライオン5Bというものがアーティストへの補償や同意がなく著作権が含まれていると、著作物が含まれているとしてアメリカで著作権侵害を理由に集団訴訟があります。一方、アメリカのマイクロソフト、GitHub、それからオープンAIの三社に対しても、人工知能、AIをトレーニングするためにオープンソースのコードを使用することでオープンソースプログラマーの仕事から利益を得ているんじゃないかということで、著作権侵害を理由に集団訴訟等が行われております。

 日本でも著作権の問題は日々大きくなっていると思いますが、そこで、これはちょっと政府にお伺いしたいと思うんですが、二〇一九年以降、AI戦略を策定してきたと思いますが、その中で、知財とか著作権法上の課題について何か方針が示されてきたのかどうか、見解を伺いたいと思います。

〇政府参考人(奈須野太君) お答え申し上げます。

 二〇一九年以降のAI戦略に関する検討において、知財あるいは著作権法上の課題に関する方向性というのは示していません。

〇山田太郎君 そうなんですね。

 そこで、文科省にもお伺いしたいんですが、AI開発での著作物利用はどこまで適法なのか、どこから違法となるのか、それも見解いただきたいと思います。

〇政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。

 AI開発として行われる深層学習等いわゆるディープラーニング等につきましては、著作権法第十条の四によりまして、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない場合、著作権者の許諾なく利用することが可能でございます。

 この著作権法第三十条の四による著作物の利用の適法性につきましては、個別の具体的事案に即して最終的には司法判断となりますが、文化庁では、関係条文の考え方や解釈について、一問一答も含めまして公表、周知を行っているところでございます。

 具体的には、同条による利用ができない場合として、例えば大量の情報を容易に情報解析に活用できる形で整理されたデータベースの著作物が販売されている場合に当該データベースを情報解析目的で複製する行為などの例示を掲げているところでございます。

 AIの進展や新たな技術の展開等を踏まえまして、随時研究を行い、引き続き著作権制度につきましても分かりやすい説明に努めてまいりたいと考えております。

〇山田太郎君 ちょっとパネル等資料を見ていただきたいと思いますが、(資料提示)画像生成でAIが著作権の問題が生じている場面ということで、ちょっとまず整理をしたいと思います。

 実は、AI、AIと言っていますけれども、大きく三つの側面があります。一つは、この①とされているAIの開発の部分です。いろんな画像とかデータを集めて学習用データを作ってAIのプログラムを作っておくと、こういう過程があるんですね。

 ②というのが、まさにI2I、イメージ・ツー・イメージですとかT2I、テキストからイメージということで、人がこういうものでAIで何か生成物を出してほしいという入力をすると、左から来た、AIの開発から来た学習済みモデルというのが各社にありまして、それを使ってAIが生成物を出すと、そして③のAI生成物ということになるわけなんですね。

 今、実は文科省さんがお話しになられました著作権法の三十条の四というのが法改正で担保されているんですが、これは何かというと、この①のAIの開発ができるようにということで、著作権が存在するもの、著作物であったとしても、よくデータを食べさせるというふうに言うんですけれども、使えるようにしましょうねということで担保したものであります。

 ただ、実は今議論ができていないというのはどこかと言いますと、それはそれでよかったんだけれども、昨今、本当に全く似たような、いわゆる元々の絵と新たにAIが出してきた別の絵がそっくりだったりとかそれ以上だったりということで、②のAIの利用とそれによるAIの生成物は著作権法上もどうなっているかという議論がほとんどされていないということになります。

 著作権法上では、類似性と、特に依拠性と言うんですけれども、元々の著作物に対して、それをそのまま意図を持って依拠してコピーしたりするのは駄目よということを言っているんですけれども、真ん中にこれAIが挟むことによって、そもそも命令を出してAIで何かを作ろうとした人はそれを意図していなかったんだということで、それ自身はいわゆる著作権法上に言うところの侵害に当たるか当たらないかということが極めて難しい判断だということになっています。

 もう一つ、パネルを、②なんですけれども、著作権の三十条の四というのを見ていただきたいと思います。

 三十条の四で著作権の権利制限を受けない場合、つまり、著作権を無視しても使っていいよというのは、今のところ法律で定義されているのは、この二の情報解析と、三の著作物を電子計算機、AIを含むということなんですけれども、その処理の過程における利用ということだけなんですね。つまり、先ほど私が申し上げました①のAIの開発というところに限られているわけであります。

 一方、三十条の四の方では、思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合、又はいずれの方法によるかを問わず利用できるというふうに書いてあるんですが、このAIの場合は、次に挙げる場合ということで申し上げたように一から三の場合で制限されています。

 もう一度ちょっと一のパネルに戻って見ていただきたいと思いますが、著作権法では、著作者の利益を不当に害することとなる場合はこの限りでないというふうにしていますが、何度も繰り返しになりますけれども、②のAI利用でデータを入れた人が人の権利を侵害する目的もなくて③のAI生成物で生成されたものが類似していたとしても、依拠性が不明の場合にはもうどうなっちゃうのか、この判断が難しいということであります。

 政府ができないというようなことで答弁をされている、データベースの著作物が販売されている場合とか複製する場合ということがあるんですが、これは、いわゆる学習済みモデルの権利に関して、これが流出して使われた場合、これは勝手に使ってはいけないよと、こういうふうに言っているわけなんですね。そういう意味で、③のAIによる生成物についてはどういう扱いになるのかということが実は十分に解釈、議論されていません。

 そこで、これ総理にお伺いしたいと思いますが、AI開発での著作物の利用がどこまで適法なのか、どこから違法になるのかについてはしっかりとこれ政府で検討する必要があると思うんですけれども、御見解いただきたいと思います。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) AI開発でのこの著作物利用の適法性については、個別具体の事案に即して最終的には司法判断によりますが、文部科学省において関係条文の解釈の周知などを行っている、このように承知をしています。

 御指摘の総合的なAI政策については、AIは今後の社会を支える重要な基盤技術であり、国民生活や経済社会のあらゆるところで普及が進む中、その技術革新のスピードも著しく、新たな課題も生じている、このように認識をしております。

 こうしたことから、引き続き、このAIに関する動向の把握に努めるとともに、御提案も踏まえてAI政策に関する組織体制の強化に向けて取り組んでまいりたいと考えています。

〇山田太郎君 ありがとうございます。

 今までAI戦略というと、CSTI、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が中心となって、どちらかというと推進の観点のみ議論されてきたと。これはこれで大事なことでありますが、知財とか著作権等の在り方に関してはほとんど議論がされてこなかったということであります。ただ、一方で、かつてのウィニーのように、本当は技術が悪いんじゃなくて、それを使う人が悪いということに対して、AIに関する政府の方針が技術を殺してしまうということがあってもいけないということでもあります。

 いずれにしても、このルールメーキングを含めた政府の総合的な部局の必要性というのは私は考えておりますので、是非総理もしっかりやっていただければ幸いだというふうに思っております。

デジタルアーカイブ政策について

 さて、次、デジタルアーカイブ政策について少しお伺いしていきたいと思います。

 ちょっと時間が迫っていますので一問飛ばさせていただきまして、データアーカイブ戦略というのは、今のこのAI戦略にも関連するんですが、まさに、デジタル社会における文化、経済、教育のあらゆる戦略の基礎にもなります。

 一方で、防災の観点からも極めて重要だというふうに思っています。

 二〇一九年、沖縄の首里城が全焼しましたけれども、実は、多くの人たちからの写真とか動画を提供してもらって復元作業が進んだ、まさにAIによって文化守られてきたのではないかなと。一方で、同じく二〇一九年の台風十九号で川崎市民ミュージアムが水没しちゃって多くの書物を破棄処分となったんですが、これ、なかなか情報がなくて破棄されてしまったということであります。

 常に我々の文化財というのはいろんな自然災害とか火災等のリスクさらされています。デジタルアーカイブをされていれば、デジタルで永続的にきちっと我々はそういう日本の文化資産を守っていくことが私はできると思うんですね。

 一方で、漫画、アニメ、ゲームに関してもアーカイブしてそれを利活用できるように、メディア芸術センターの構想についても実は骨太の方針なんかにも記載されています。

 そこで、総理にお伺いしたいと思います。

 デジタル社会におけるあらゆる政策の基盤となるデジタルアーカイブの推進について、デジタルアーカイブ推進法のような基本法は、私は絶対必要だと思うんですね。これ、いろんな部署が関係してきますので、司令塔機能も含めてこういったものが必要だと思いますが、総理の御見解いただきたいと思います。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) データは国の豊かさや国際競争力の基盤であるとの認識の下に、社会で広く利活用するべきデータに関して、デジタル庁を中心に包括的データ戦略を策定し、データの整備等を進めているところですが、委員御指摘のデジタルアーカイブに関して、社会的なニーズの高い行政データについてはデジタル庁を中心に国民が利活用しやすい形でのデジタル化の取組をまさに進めており、また、民間や公的機関のデータの中でも、利活用に当たって知財権との関係を整理する必要のある文化芸術を中心としたコンテンツのデジタルアーカイブについては、内閣府において議論を進めているところであると承知をしています。

 そして、その他の情報については、例えば、どのような情報についてデジタルアーカイブを進めていくニーズがあるか、情報の取扱いやアーカイブするためのリソースの確保をどう進めるべきか、また行政としてどう関わるべきかといった論点があると承知しており、デジタルアーカイブを推進するための枠組みや必要な予算を含め、引き続き関係省庁が連携して検討してまいりたいと考えています。

〇山田太郎君 ありがとうございます。

こども家庭庁発足にあたって

次、こども庁発足という辺り、質疑していきたいと思います。

 四月一日よりこども庁発足ということで、本日から本格始動ということであります。本当に、このこども庁の設立、私の、こども家庭庁ですね、こども家庭庁の設立は私の悲願でもありました。ここ少し、ちょっと、決算委員会でもありますし、振り返っておきたいと思います。

 実は、私自身、野党時代、こども庁の必要性というものをずっと訴えてきまして、当時の国会の質疑なんかでもいろいろ議論させていただいていました。二〇一六年の一月十九日は、参議院の予算委員会で、当時、菅官房長官に対しても質疑したんですが、なかなか政府を動かすことができなかったと。

 一方、私、自民党に移ってきまして、二〇二一年の一月二十四日ですね、二年ちょっと前、菅前総理に、ネットと政治について相談したいというふうにして公邸、官邸に呼ばれまして、前日まで夜通ししてプレゼン資料を作って、五年越しの直談判を、一時間半、一時間にわたりこども庁について提言しました。実は、そのときの菅総理の手応え感、余り感じられなかったんですが、後日、官房長官、実は加藤官房長官ですけれども、当時、総理がこども庁について強い関心があると御連絡いただきまして、ここは機運だと、こういうふうに思いまして、直ちに自民党若手議員を中心にチルドレンファースト行政のあり方勉強会というのを自見はなこ議員始めとして多くの自民党若手議員と立ち上げました。国会議員三十名以上、そして地方議員は四百五十名以上も集まってきたというものであります。そして、四月一日には当時の菅総理・総裁から自民党党内に本部を立ち上げるよう指示がありまして、そして、こども本部が党内に立ち上がって、党内でいろいろ議論をしてきました。

 ところが、その年の総裁選に菅総理が不出馬を表明されましてちょっと先行きが不透明になっちゃったんですね。二〇二一年の九月に自民党の総裁選がありまして、再びチルドレンファーストの勉強会で子供政策の公開討論会というのを開催しました。総裁四候補に来ていただきました。岸田総理もいらっしゃいましたし、高市大臣もそのときビデオメッセージの形で参加していただきました。そして、その際、岸田総理は、創設に賛同していただきまして、非常にこのこども庁の重要性ということについて共有いただきました。

 その際、討論会で岸田総理からこんなことを言われました。こどもの命を守るために鍵になることはこどものデータを共有することだと思うと、最近最も胸が痛んだことは旭川と町田の痛ましい事件であり、第三者委員会の公正性、独立性をどう高めていくかの工夫が必要だと、こどもの命、健康、人権を一元的に見ていくためにこども家庭庁が必要だと、こういうふうに御発言されました。

 私、本当にそのときのことを鮮明に覚えておりまして、これはいけるなというふうに思っていまして、その後、岸田総理は十月に第百代の内閣総理大臣として指名されました。そして、その年の十二月の末には閣議決定行いまして、翌年二月には設置法を国会に提出して、去年六月に国会で成立をすると、こういう運びでありました。そのときのことを岸田総理は覚えていらっしゃったかどうかということでもありますが。

 そこで、岸田総理にもお伺いしたいと思いますけれども、今後のこども庁でこどもの命、健康、人権について重点的に取り組んで、これ以上こどもの命が、こどもが命を落とすことがない、日本ではこどもが原則というか、死なない国なんだというふうになるように力強く宣言いただきたいと思いますが、御決意いただけないでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 委員御指摘になったこれまでの経緯、私も振り返りましていろんなことを思い出しておりました。総裁選挙においても、当時、文部科学省、厚生労働省あるいは警察庁を始め、様々な機関においてデータがそれぞればらばらに運用、活用されていた事態を踏まえてデータの統一を訴えた、こんなことも思い返しておりました。そして、こども家庭庁、四月一日にスタートをし、まさに今日の昼、発足式を予定しております。

 そして、その中で、命ということの重要性、委員の方から御指摘がありました。昨年の児童生徒の自殺者数が五百十四人と過去最多となり、児童虐待の相談対応件数も最新のデータで二十万件を超えるなど、子供や若者を取り巻く環境は大変厳しいものになっています。自殺や児童虐待により子供が命を落とすことはあってはならない、こうしたことを強く思います。

 そして、こども家庭庁においては、子供の視点に立って、子供の権利利益の擁護を図り、その最善の利益を実現できるよう施策の充実に取り組むとともに、子供政策の司令塔として、警察庁、厚生労働省、文部科学省など関係省庁と連携しつつ、子供の自殺対策や児童虐待防止対策、不慮の事故の防止など、子供の安全対策、重点的に取り組んでいきたいと考えています。

 子供が命を落とすことなく健やかに成長できる社会の実現に向けて全力を尽くしてまいりたいと考えております。

〇山田太郎君 ありがとうございます。

「異次元の少子化対策」について

 次は、異次元の少子化対策について少し質疑していきたいと思います。

 三月末に発表されました対策を拝見させていただきました。本当にしっかりとこれら全てが実現されれば、環境は大きく変わるというふうに思います。大事なことは、いわゆるメニューに終わらずに、工程表ですとか、誰が責任者なのかということをしっかり展開されることなんだというふうに思っています。

 ちょっとこれ、パネル三ですね、資料の三を見ていただきたいと思いますが、現在、子供に関する担い手というのがどれだけいるかという話を、ちょっと複雑な図ではありますが、見ていただきたいと思っております。

 ちっちゃく人型の絵が描いてあると思いますが、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、担任の先生ですね、養護教員、児童指導担当員、ケースワーカー、民生委員、地域子育て支援員、自立支援相談員、家庭相談員、児童委員、こども家庭職員、児童相談所職員、子ども家庭支援センター職員、保健センターなどなど、要対協の関係者なんかもいます。

 本当にたくさんの方々がいるんですが、実はこれ、ちょっと段階を見ていただきますと、子供たちの困難を見付けるということについてはいろんなものがこれまで充実されてきましたが、つなげるという部分ですね、これが非常に薄いのではないかという問題意識を持っています。

 つなげるところ、ちょっと見ていただくと、児童相談所というのはありますが、一方で、保健センターその他ということで、ポイントになるのは多分子ども家庭支援センターということになってきます。ただ、御案内のように、子ども家庭支援センター、この令和六年にこれ施行ということなんですけれども、努力義務じゃなくて必置義務、ああ、必置義務じゃなくて努力義務ということなんですね。

 そうなってくると、もしかしたらこれ点々ということになってしまって、いろんな人たちがいろんな役割を持ってやっているにもかかわらず、しっかりと支えるというところにつながってこないのではないかと。こどもDXに関しても、党内で私、責任者としてやらせていただいているんですが、DXだけでは駄目で、これらの担い手がしっかり有機的に連携しなければならない、こんな問題意識を持っております。

 ただ、一方で、これ、千七百四十一ある市区町村の中で、実は三分の一の市区町村が人口一万人以下という状況であります。そうなると、結局センターを置きたくても予算がないとか、結局人員がいないということになってしまったりします。都道府県と市区町村の連携ということも重要ですし、これ是非、こども家庭センター、もう努力義務ではなくて必置義務にして、しっかりこの担い手をつないでいきながら支えるというところにあるべきなのではないかと、こう思っております。

 この辺りを、こども庁担当又はこども大臣と言いたいところでありますが、こども家庭庁担当大臣にお伺いしたいと思います。

〇国務大臣(小倉將信君) 先ほど来議論ありますように、省庁間の、関係省庁間の縦割り打破をするためには、支援の必要な子供に関する情報の共有と連携というのは非常に重要だと思っております。

 したがいまして、こども家庭庁発足前から、デジタル庁とも連携をしつつ、個人情報保護には配慮しながら、支援の必要な子供に対するアウトリーチ支援に関するデータ連携の自治体の取組を支援をしてきたところであります。また、昨年の末に、私の下で子供政策のDX推進に関するプロジェクトチームを立ち上げました。先般、その工程表を発表させていただいたところであります。しっかり子供政策におけるDX進めて、自治体の方の負担も軽減をさせていただきたいと思っております。

 その上で、昨年成立した改正児童福祉法に基づくこども家庭センターは、各市区町村の規模や実情が様々であること等を踏まえ、御指摘のように、法律上はその設置を努力義務としたところでありますが、こども家庭庁としても可能な限り全国の市区町村において設置していただきたいと考えており、今後お示しをする運営要領に広域連携による設置が可能である旨を明記することや、安心こども基金を活用した財政支援などにより全国展開を進めてまいります。

 また、こども家庭センターの創設趣旨は、御指摘のように、児童福祉や母子保健の一体的な対応を図ることや地域の様々な関係主体等との連携を促進することにより、家庭支援の強化を目指すというものであり、これが実現されるよう、今申し上げたこども家庭センターの全国展開に向けた取組を着実に進めることに加え、今後は、委員の御指摘も踏まえながら、デジタル技術を活用した子育て家庭などの皆様の負担軽減に向け、こども家庭センターが果たすべき役割の検討を進めてまいりたいと思っております。

〇山田太郎君 ありがとうございます。

 本当に、こども庁、こども家庭庁、私も思いがあって、もっと質疑、時間があればしたいんですが、あと時間が残されているの少なくなってきましたので、済みません、随分飛ばさせていただいて、花粉症対策とその撲滅という辺りに行きたいと思います。

花粉症対策について

 今や国民の四人から三人に一人が花粉症を罹患されていると言われています。経済損失も数千億円ということを言われておりますが、どうしてこの花粉症に対する政府の政策が進んでこなかったのかなということを検証していきたいなというふうにも思っています。

 ちょっとこれ、パネル資料を見ていただきたいと思いますが、この資料は私の事務所で作らさせていただきました。

 この花粉症対策には四つのモデルというか区分があると思っていまして、一つは花粉の生成を抑えるところですね。それから、飛散に対して予測して対応すること。暴露、これは花粉に触れないようにするということであります。そして、発症ということで、花粉症になっちゃった場合にどうやって対応するのかということでありますが、まず、一の花粉症の生成のところからいきたいと思いますけれども、花粉症の発生源である杉等の花粉を減らすために、新たな少花粉杉とか無花粉杉への入替えを行うということが非常に大きなポイントだと思いますが、そういった意味で、農水省さんにこれはお伺いしたいと思います。

 少花粉杉、無花粉杉のこれまでの成果と今後の方針及び数量目標、また、一〇〇%少花粉杉、無花粉杉にする場合の課題等について御見解、お願いします。

〇政府参考人(織田央君) お答えいたします。

 林野庁におきましては、少花粉杉、無花粉杉などの花粉の少ない苗木の生産拡大に取り組んでおりまして、令和二年度には千三百九十三万本まで増加し、生産量が十年前と比べて約十倍、杉苗木の年間生産量の約五割に達しております。

 花粉の少ない杉苗木の生産、利用を拡大していくためには、品種の開発ですとか採種園の整備、さらには新しい品種の使用に対する森林所有者の理解の醸成等の取組が必要であることから、一定の期間を要するわけでございますけれども、当面、令和十四年度までにこの杉苗木の年間生産量の約七割にまで増加させることを目標に、引き続き関係機関、関係団体と連携し、生産、利用の拡大に取り組んでまいる考えでございます。

〇山田太郎君 私が二〇一二年の末に国会議員になりまして最初に実は質疑したのが、この少花粉杉、無花粉杉なんですね。そのときの農水大臣が、実はここにお座りの林外務大臣だったということであります。当時はこの苗が数%しかなかったんですが、私もう何度も何度も農研機構さんに足を運びまして、五割まで達したということは本当に大変感慨深げに思います。

 ただ、全てをこれ植え替えるのには数十年以上掛かるということでありまして、やはり即効性という意味においては、別に杉花粉飛散防止剤の実用化というものがあります。この杉花粉飛散防止剤の実用化に向けた状況と今後の方針、期限目標、課題等、お伺いできればと思います。

〇政府参考人(織田央君) お答えいたします。

 林野庁では杉花粉飛散防止剤の開発を平成二十九年度から支援をしておりまして、シドウイア菌という菌類を活用した防止剤の開発につきましては、令和三年度までに、防止剤の散布により杉の雄花が枯死し、花粉量の抑制が図られるなどの効果が確認されたところでございます。

 今後に向けましては、効果的、効率的な散布方法の検討、あるいは森林生態系への影響を含む更なる安全性の確認等が課題となっておりまして、現在、事業主体が、これらの課題解決を含め、農薬登録を始めとする実用化に向けた取組を進めているところでございます。また、令和四年度からは、食品添加物として利用されている物質で杉の花粉発生に対して抑制効果のあるものを活用した新たな防止剤の開発に対しまして支援を行っているところでございます。

 これらの花粉飛散防止剤の開発につきましては、いずれもまだ様々なレベルでの課題がありますので期限を定めた目標の設定はできておりませんけれども、課題を一つ一つ解決しながら、引き続き早期の実用化に向けて取り組んでまいる考えでございます。

〇山田太郎君 このパネル見ていただきたいんですけど、二の飛散というところは結構対策されていまして、気象データとか前年の杉の生育状況から飛散状況を割と正確に把握できるようになりました。一方、三の暴露のところなんですけれども、これは、マスクをして花粉から体を守ったり花粉が付きにくい建材にするなど、こんなことが考えられるんですが、ただ、家の外は環境省なんだけれども、家の中の、外装、建材は国土交通省、器具等々は経産省となっていまして、屋内の空間についてはどこが省庁かというのは分からないということであります。国の取組が非常に薄い部分なんですね。

 そして、即効性ということで多分一番期待されているのは、四の発症対策ということになります。発症対策には二つの方向性があります。一つは、罹患しちゃった、花粉症になっちゃった人については、その症状を抑えるいわゆる抗ヒスタミンというものの薬の開発ということでありますが、これはかなり行われているものの、対症療法でしかないんですね。

 やはり注目されるのはもう一つの根治させるというところでありまして、まさに、体に入ってきた花粉が人間の敵ではないよということで体の免疫細胞に教えさせてアレルギー体質から脱却させるということです。有名なのは減感作方式ということで、舌下吸収等で少しずつ花粉に体を慣れさせるということでありますが、時間と手間が非常に掛かるというふうに言われています。そこで注目されるのはワクチンに対する対応ということでありますが、このワクチンの開発研究が理化学研究所で進められて特許も取得されていたということですが、実は開発は断念されているということであります。

 そこで文科省にお伺いしたいと思いますが、どんな研究がされて、具体的にどんな内容だったのか、断念した理由等について簡潔にお答えいただければと思います。

〇政府参考人(森晃憲君) お答えいたします。

 理化学研究所におきましては、花粉症等のアレルギー疾患の基礎研究のほか、臨床応用として杉花粉症ワクチンの開発を実施をしておりました。このワクチン開発に関しましては、民間企業と共同研究を行ってきたものの、大量生成法の確立に至らなかったなど既存薬に対する優位性を見出すことができなかったため、企業側の判断により開発は中止となりました。

 現在、理化学研究所では、アレルギー性鼻炎の遺伝的特徴を明らかにするための基礎研究を実施をしておりまして、引き続き関係省庁とも連携しながら、将来的に最適な治療法の開発につながるような基礎研究を推進してまいりたいと考えております。

〇山田太郎君 それ以外、先ほど農水省さんからもコメントありました花粉症緩和米の実用化ということについてもあるんですが、これも遺伝子組換え技術を用いられているということ、効果、効能をうたうところが難しいと、それから製薬メーカーさんの参画等の問題でなかなか難しい状況になっているということであります。

 ただ、本当に我々はコロナ克服するためにいろんなことを対策してきました。政府が本気でやればここまでワクチンに対してもできるんだということを見せていただきましたので、是非これは、農林水産大臣、そして総理にも、この花粉症対策、国を挙げて、これだけの国民病というふうに言われているんですから、やっていただきたいというふうに思います。特に、総理におかれては、もしこの司令塔となる仕組みをつくってこの対策をしていただければ多分大変人気が出る政策にもなると思っておりますし、まさに花粉症撲滅ということになれば、私は総理の名前を歴史に残すことができると思います。

 関係省庁である農水大臣、そして総理に最後、御見解を伺いたいと思います。

〇国務大臣(野村哲郎君) お答えを申し上げたいと思いますが、山田委員も前から花粉症で、私も実は今年になって、大臣になって花粉症になったのかどうか、いつも答弁のときにはくしゃみが出そうになるものですからマスクをしているんですが、今日はもう外して大丈夫だろうなと思いながら答弁をさせていただきたいと思いますが。

 花粉症につきましては、もう先ほど来お話がありました。大変これは重要な問題だというふうに思っておりまして、先ほど林野庁の長官が答弁申し上げましたように、いわゆるその余り花粉の飛ばない、そういう無花粉の杉の拡大というのは、やっぱり我々のこの林野の方ではそういう出さないというところが一番大きなことになってきますので、十四年には大体今の七割ぐらいはカバーできるんじゃないかと、こんなふうに思っております。

 花粉の少ない苗木の生産拡大、それから花粉の飛散を抑制する技術開発などの花粉症の発生源対策に取り組んでまいりますが、それとほかにも、私どものところで農研機構という研究機関を持っておりますが、ここでも、遺伝子組換えの技術を用いた花粉症のこの緩和、米ですね、緩和米、これについて臨床研究なり消費者の理解の促進などを今図ろうとしているところでございまして、年々研究も進んでいくだろうと。

 ただ、農水省だけでできる話ではございませんので、これらの取組につきましては、いろんな課題もありますので、関係省庁や関係機関と連携して、これからの取組も自分のこととして私も一生懸命やってまいりたいと、こんなふうに思っているところでございます。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 花粉症については、もはや我が国の社会問題と言っていいような問題であると認識をしています。そして、委員、まさに全体像、対策の全体像をお示しになられましたが、発生源対策、それから発生の予測、それから予防、それから治療と、様々な対策が求められます。要は、これをどう組み合わせて、効果的な組合せをつくって対策を行う、これが重要だと思っています。

 そういったことから、政府においても関係閣僚会議、これを開催し、そして情報共有、そして効果的な対策の組合せ、こういったものに取り組んでいます。是非結果を出したいと思います。

〇山田太郎君 時間になりました。関係閣僚会議、対策で結果を出すとコミットいただきましたので、大変有り難い答弁だったと思います。

 以上にて終わります。ありがとうございました。