2019.9.21

欧州視察⑥スウェーデンの年金制度

【欧州視察⑥】スウェーデンの年金制度

9月17日はスウェーデンのストックホルムに到着。年金庁からスタートです。スウェーデンを始めとした北欧各国の年金システムは高負担であっても先進的であるとのイメージでした。しかし、現地で調査したりスタディしても、根本的には日本の仕組みとそう変わらないと言うのがまず率直な感想です。

スウェーデンの年金の基本は賦課方式(積立ではなく、税金で現役世代が高齢者をサポートする方式)であり、所得に応じた給付の所得代替率の考え方もそう変わりません。

所得に占める社会保障全体の負担は日本に比べると重く、計算によっては可処分所得が35%程度になるなど大変です。しかし、スウェーデンの年金については公的年金の代替率は36.6%(2019年、2018年の所得比例の年金と保証年金の平均では男性が14100クローネ=約15万5千円、日本は国民年金平均5万5千円と厚生年金男性平均16万6千円)給付の割合は日本と比べてあまり変わりません(あまり、平均で比較しても色々前提が違うので意味はないかも知れません)。ただし給付は所得に対して概念上拠出建てとなっていて幾ら貰えるのか計算しやすく分かりやすくなっています。そして年収別の代替率を細かく国民に提示していて、低所得者の場合の代替率が高いことも理解しています。

しかし、スウェーデン国民からの社会保障制度への支持は高く、生活満足度調査でもいつも上位にあります。税金高くて可処分所得が低く、どうして満足するのか?そんな疑問が湧きます。

日本と違うのは、社会保障制度についての信頼度感が違います。これで老後は大丈夫だから、若いうちに心配だからせっせと貯蓄しないとという発想には無いようです。そして、政府や政治に対する信頼感が違います。スウェーデンなど北欧では政権が幾たび代わっても国の社会保障制度は揺るぎがありません。どんな政権になっても、スウェーデン国民が支えている社会保障制度は、国民から信頼されているのです。

日本は、政府や政治に根強い不信感があります。若者の多くは将来年金は全くもらえないのでは無いかとさえ思っています。私も民間の時はそう思っていました。

冒頭、スウェーデンも日本も同じような仕組みであると言いましたが、そもそ何が違うのか?それは、年金制度について打ち出し方や見せ方が違うという事です。

日本では年金が幾らもらえるのか、その背景に幾らの貯蓄があるのか、平均値や中央値をすぐに示したがります。所得代替率が現在61%、それがマクロ経済スライド方式で、50%にまで減らされます。必要な貯蓄は2000万円です。などと説明されます。すると、「そんなに年金は減らされるのか?」「2000万円も貯蓄がない」と大騒ぎになります。

しかし、実際の低所得者の日本の年金の所得代替率は100%に近く、現行の仕組みなら退職しても今と同じような暮らしができる仕組みです。高所得者は、低い所得代替率で減らされますが、それ以上に蓄えがあるという前提です。

日本は海外に比べても生活保護の仕組みもありますので、無年金で路頭に迷うという事はありません。日本はそれなりのセーフティネットがあり、ベーシックインカムの仕組みができています。

でも、今までそう言った丁寧な説明はされません。むしろ、平均ではこうだと十把一絡げの説明されるため、それに達していない場合には不安を煽ってしまします。

スウェーデンでは、国民に平均値の様な説明は一切ありません。(上記の私のスウェーデンの平均値などは、日本と比較するため無理くり計算したものです)むしろ、低所得者や無年金者には「保証年金」があり、その額がはっきりしています。

スウェーデンでは、年金が幾らもらえるかも、月平均1万9200クローネの所得以上(保証年金の最高支給額の出る下限平均月収)は、賦課方式部分は所得比例配分で、積立方式部分はプラス運用益で、みなし運用益を加えて拠出建で分かりやすくなっています。

確かにスウェーデンの保証年金の金額は2014年は9.7万円と日本に比べて若干高いのは事実です。ただ、スウェーデンで説得力があるのは、低所得者や無年金者がきちんと保証年金で保証されていると宣言されている事です。

日本ではこの点、もらえるのか、もらえないのか?生活保護との関係は、だなど曖昧で分かりにくいという点があります。また、日本の政治は、とかく平均、平均と言いすぎて、ボトムラインについてのしっかりとした説明をしません。なので、最悪のケースどうなってしまうのか、心配になってしまいます。

年金改革の議論も、日本は財政健全化から減らす、受給年齢の延長などの議論が主となります。しかし、スウェーデンは、何歳まで働けるのか?それによって、長く働くことができれば、年金財政はより充実になり、自分たちの年金システムは守られるという発想です。

「他人への支払い(収奪)」という考えではなく、「自分たちへの配分(分前)」という保険の考えをしていて、年金支払についてもポジティブです。

もちろん、スウェーデンにも高齢化による年金のアンバランスの問題、積立部分の不正運用による制度の見直しなど問題を抱えています。しかし、それらは解決できるという自信が政府だけではなく、国民にもあるようです。

それを支えているのが、年金について毎年国民に詳細な赤い封筒(スウェーデンの年金定期便の毎年詳細版)なのです。

自民党内でも全世代型社会保障制度改革の議論が始まりました。日本の政治が信頼させれ、特に若者の将来不安が無くなるようしっかり日本の年金制度にメスを入れていきます。

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