2020.6.3

少子化社会対策大綱閣議決定、私の主張と今後の課題

(自民党内閣第一部会での少子化大綱審議の様子)

5月29日、少子化社会対策大綱が閣議決定されました。この少子化大綱は5年に一度見直しが行われるもので、今後5年間の政府の方針が具体的に決定されます。ちょうど今年がその年にあたります。この見直しに対し、参議院自民党政策審議会では、昨年から有識者や現場からのヒアリングなどの議論を重ね、独自で緊急提言をまとめました。

この提言では、主に以下のようなことを主張しました。

・結婚しやすい環境の整備、婚活事業の促進

・第一子の誕生に際しては“お祝い金”100万円を支給

・児童手当の支給対象は高校生まで拡大。また、多子世帯への増額。

・高等教育の無償化

・妊活・不妊治療への支援・保険適用

・望まない妊娠を減らす取り組み

少子化大綱に盛り込むことは、5年に一度の非常に重要なチャンスなので参院自民政審の提言を少子化大綱に盛り込むよう、私が交渉責任者として、政府に変更を迫ってきました。粘り強く迫ってきたこともあり、政策審議会の案は9割以上何らかの形で記載されました。その中で大きなポイントは以下の3つです。

①不妊治療の補助、保適適用の拡充

②児童手当の拡充・経済的支援の在り方についての検討

③男性育児休暇の取得率を上げる

・①不妊治療の補助、保険適用の拡充

今回の少子化大綱では、パブリックコメントを募集していましたが、このパブコメ3800件のうち40%が、この不妊治療に対する見直しの要望でした。現在、体外受精で生まれている子供は実際に生まれてくる子供の16%、そして不妊治療を行っているカップルは5.5組に1組という、大変大きな割合になっています。

初版の少子化大綱には、不妊治療についての充実という書きぶりが弱かったので、私からもかなり強く主張していました。結果として、「不妊治療の経済的負担の軽減を図るため、高額の医療費がかかる不妊治療(体外受精、顕微授精)に要する費用に対する助成を行うとともに、適応症と効果が明らかな治療には広く医療保険の適用を検討し、支援を拡充する。」という文言が記載されました。そして、2020年度に不妊治療の実態把握を行い、効果的な治療に対する医療保険の適用の在り方を含め検討されることが盛り込まれています。

不妊治療の補助拡大、所得制限(現行730万円以下、夫婦合算)の緩和、保険適用についても、きちっと政府が取り組んでいくということが明示されたことは、大きな進展だと思います。

・②児童手当の拡充・経済的支援の在り方についての検討

現在、児童手当は中学生修了までの児童1人につき月1万5千円または1万円が支給されていますが、(手当を受ける人の所得が、所得制限限度以上の場合には、特例給付として児童1人つき月額5千円の支給)参院自民政審では、この児童手当を高校生まで広げるよう、強く要請してきました。

結果として、「児童手当について、多子世帯や子供の年齢に応じた給付の拡充・重点化が必要との指摘も含め、財源確保の具体的な方策と併せて、子供の数や所得水準に応じた効果的な給付の在り方を検討する。」と明示されました。

そして、政審からは、出産祝い金として1人100万円を支給する具体案を提言してきました。最終的には、具体的な記載されなかったものの、妊娠・出産について希望をもつことができる環境をつくり、経済的支援の在り方について総合的に検討することが記載されましたので、これからの議論につなげていくことが必要です。

また、大学等の教育無償化については、現在低所得者層向けの実質無償化がありますが、これを中間所得層にも拡大していくことの提言についても前向きに記載されましたので、今後の実現にむけて積極的に動いていきたいと思います。

・③男性育児休暇の取得率について

政府は今回の大綱で、現在の男性の育児休暇6.2%という5年間の実績に対して、今後5年間の間で30%の取得を目指していくという数値目標も明らかにしました。

そして、全体を通して、施策の進捗状況を検討・評価していくPDCAサイクルをしっかりまわすという政府の体制も発表されましたので、その点は評価できるのではないかと思います。

逆に、今回の大綱の中で自民党政審が強く主張したにもかかわらず、取り上げられなかったところについても説明したいと思います。

まず、企業の出産等に対する少子化に対する拠出金についてです。例えばフランスでは、家族給付という家族政策の核となる制度があり、これは全国家族手当金庫(CNAF)が管理運営し、各県にある家族手当金庫(CAF)が支給しています。この財源の6割は事業主が拠出しています。

私からも、この企業負担について盛り込むよう強く主張しましたが、結果「社会全体で費用負担の在り方を含め、幅広く検討」という書きぶりに留まりました。

また、オーストラリアのHECS(Higher Education Contribution System)についても、導入の検討を主張しましたが、明記はされませんでした。(高所得者世帯を含めた全世帯の学生の授業料相当額を後払いする制度。卒業後に所得が一定以上を超えてから、授業料を納付する。)

・今後必要な体制と議論

これまで、政府では様々な政策を行ってきましたが、大きな効果は上がっていないと言わざるを得ません。それにもかかわらず、実は、自民党の中でこの少子化を専門で議論している部署がありません。これだけ少子化の問題が国として重要課題とされていながら、党内に恒常的に議論できる場がないことは非常に問題であると、私は強く主張し、調整してきました。そして、岸田政調会長から、少子化について専門で議論する部署を新たに立ち上げるか、もしくは現在ある特別委員会で議論してくという発言があったようです。

出生数は、昨年86万4000人という明治32年の統計開始以来、初めて90万人を下回りました。政権与党としても、少子化にどう立ち向かっていくのか、国の在り方を国民とともに真正面からオープンに議論をしなければならない局面にきています。

また、少子化問題の根本的な原因は個人の価値観・ライフスタイルの変化や若者の貧困にあると考えています。党内での議論はその点まで充分に踏み込んでいるとは言えません。引き続き、党内での新たに立ち上がる部署または特別委員会でそういった点についても議論を深め、政府に働きかけていきたいと思います。

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