2015.7.30

安保法制案に対する国民の「不明」・「不信」・「不安」について安倍総理に質問

7月30日、我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会にて質疑を行いました。

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【質疑のポイント】
・安保法制案に対する国民の「不明」・「不信」・「不安」について安倍総理に質問しました。

・政府が安保法制案でその具体的内容を明文化しないことにより、大きくなる国民の「不明」

・日米同盟を強調してきた中曽根、小泉歴代総理大臣らも「日本の集団的自衛権の行使は許されない」とした法解釈を変更することによる国民の「不信」

・アメリカでの9.11報復テロ、フランスでの凱旋門駅爆弾テロ事件など海外での自衛隊の後方支援活動によりテロのリスクを格段に高めることになる国民の「不安」

・国民の「不明」・「不信」・「不安」に対する「①例外なき国会の事前承認」と「②途中段階、そして、事後の検証とその国会への報告」の必要性について質問をぶつけました。

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【議事録(未定稿)】
山田太郎君 日本を元気にする会・無所属会の山田太郎でございます。
 今日は、この安保法制が国民にどう捉えられているのか、何が今国民との間で違っているのか、この辺りを中心に質疑をしたいと思っています。
 まず冒頭に申し上げたいのは、先日、七月二十七日、参議院の本会議におきまして、安倍総理は、さきの総選挙で集団的自衛権の行使について争点があったかという質問に対して、主要な争点の一つであったのは明らかで、国民から強い支持をいただいたと答弁されていますが、私自身は、この集団的自衛権が前回の総選挙でとてもではないけれども争点になったとは思っていません。この法案に対して、政府に白紙委任をしているわけではないと。選挙は別の争点なのであって、選挙で勝ったからといって、何が何でも数で押し通すということでは、私は民主主義は崩壊してしまうというふうに思っておりますので、最初付け加えさせてスタートしたいと思っております。
 まず、フリップの方を見ていただきたいと思います。(資料提示)山田太郎もセルフサービスでございます。
 これは、今の政府の、あらゆる事態に対応したいという立場と、それに対する国民の、一定の限定が必要だ、この間に実は不明、不信、不安という「三つの不」が存在しているのではないかと、こういう辺りから今回の法律を少し質疑していきたいというふうに思っています。
 まず最初に、国民が不明に思っているという辺りについての言及をしていきたいと思います。
 国民の立場に立てば、なるべく法律で細かい規定を書き込むことによって歯止めが掛からない状態を避けたい、線引きをはっきりさせたいと、こういうことなんだというふうに思います。
   〔委員長退席、理事石井準一君着席〕
 ただ、集団的自衛権を行使する前提となる存立危機事態が一体何なのか、それから、存立危機事態であったとしても武力攻撃事態ではないものは何なのか、さんざん国会でも議論になっているホルムズ海峡という話もありますが、南シナ海はどうなのか、朝鮮半島有事はどうなのか、台湾有事はどうなのか、さっぱり分からないと。今政府が言っている、法律のまさに切れ目なきというふうに言っていますが、集団的自衛権でなくとも個別自衛権でほとんどクリアできるのではないかと、こういう質疑もずっと衆議院段階から行われてきた。それでも政府はこだわって集団的自衛権を法律上認めるということを言うのは、何かそれ以上のことを政府がやりたいのではないかと、こういうふうに疑ってしまうわけでもあります。
 まさに法律に具体的に明文的に書かれていないので、国民はいつまでたってもその内容、我々国会議員とともに、一緒に不明なままと、はてなでいっぱいだということだと思います。まさに不明なことも多く、法律の不備なんかも指摘されていますが、実は新法は法律そのものが切れ切れなのではないか、こういうふうにも思うわけであります。
 ただ、政府は多分、個別の事態によっては状況が違うので柔軟な対応ができないと国を守れなくなってしまう、こういうことを言い続ける。もしかしたら、具体的なことを明示的に決めていない大陸法、それから曖昧な部分を残す英米法の違いであれば、本来は解釈ということがとっても大切なことになるわけでありますけれども、ここで総理にお伺いしたいんですけれども、政府は、法律では明文化せずに、運用面で総理あるいは防衛大臣の判断で行える余地をなるべく持っておきたいということでこんなに曖昧なのかどうか、この辺りをお答えいただけないでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 今回に当たっての、まさにこれ、中核については、今委員がおっしゃっているのはこれは存立危機事態についてだろうと思います。ほかにもこれ法制がございますから、恐らくそれについての質問だろうと、このように思いますが。
 存立危機事態につきましては、これは今までの憲法解釈において、必要な自衛の措置の中においては、我々は権利としては国際法上有している集団的自衛権の行使はできないと、これはフルスペックでできない、フルスペックにおいてはできないと、こう考えていたところでございますが、この三要件、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険という条件を付け、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない、そしてそのときには必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、この三要件に当てはまるものについては自衛の措置をとることができると、こう解釈をしたわけでありまして、この言わば核心の部分につきましてはまさに法律に明記をしてあるところでございます。

山田太郎君 それが具体的に分からないということが今の論点だったんですが、残念ながら条文を繰り返すばかりと。不明なところをますます不明にしてしまっているんじゃないかなということで、残念であります。
 それから、法解釈という話なんですけれども、実はこの集団的自衛権に関しては、内閣法制局長官クラスだけではなくて、歴代の総理の中でも比較的日米同盟を強調してきた中曽根元総理が一九八三年三月十八日、それから小泉総理が二〇〇一年五月十日に、それぞれ衆議院本会議におきまして、日本の集団的自衛権の行使は従来から憲法上許されないという旨の答弁を実はしているんですよね。親米とよく言われていた総理ですら認めてこなかったこの集団的自衛権について、こうも簡単に解釈が変わってしまうということであれば、まさにこの国会の議論になっている法的安定性がなくて、それが国民の不信につながると、こういうことなんじゃないかなというふうに思っておりますが、特にこの二人の総理の発言に関して安倍総理はどのようにお考えですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 当然これは歴代の内閣の立場を述べたものであります。そして、どういう意味について述べたかといえば、それはまさに一般的に認められている、国際法によって認められている集団的自衛権の行使、言わばフルのスペックについてはそれは認められていない、行使は認められていないと、こう答えているわけでございます。
 そして、今回はこのフルではなくて、まさに先ほど申し上げました法律にも明記されている三要件にかなうものについては行使することができる。そしてそれは、国民の命を守るためにまさに必要な自衛の措置とは何かということを、何がこの必要な自衛の措置のために行うべきか、あるいはその範囲に入るかということを変わっていく国際環境の中で考え続けてきた結果であろうと思います。
 国際環境というのは大きく変化をしていきます。同時に、武器等の技術も進歩していく中において、国境という概念は、これはもうだんだんなくなっていく中において、脅威は簡単に国境を越えるという中において、我々はこの必要な自衛の措置について、三要件の中にとどまる自衛の措置はとり得ると、このように考えているところでございます。

山田太郎君 しっかり総理はその中曽根総理又は小泉元総理が答弁した本会議のを見てそう答えていらっしゃるのか、私はちょっと理解に苦しむんですが、中曽根総理はもう明確に、個別自衛権の範疇のうちで行うのであって、集団的自衛権の行使は否定されていると強く主張していますし、小泉総理も、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えてきていると、こう明確に言っているわけなんですよね。
 フルスペック論、一部というようなことの解釈がまた発生どんどんしていくということが、まさにここでも法的安定性というのがどうなのかということが議論を呼んでいるのではないか、これが国民にとって二番目の、不明の次の不信につながっているのではないかと私は実は思ってやみません。
 もう一つ、心の内の違いというのが多分政府と国民の間にあるのではないかなと。これが不安を呼んでいるというふうに思うんですが、例えば、テロの九・一一、これはまさに報復攻撃でありますし、フランスにおいても、エールフランス航空ハイジャック事件、サンミッシェル駅爆弾テロ事件、凱旋門爆破テロ事件、武装イスラム勢力の関与が指摘されていると。イラク戦争では後方支援を行っていたスペインにおいて、二〇〇四年の三月にマドリード市内で大きなテロがありまして、百九十一名が亡くなる、二千名以上が負傷する。これによってスペインは、後方支援をやっていたんだけれども、イラクからの撤退を決断すると、こういうことなわけであります。
 海外での後方支援の拡大が実質の武力行使の一体というふうに見られて、日本のまさに非戦のブランド、それから平和のブランドが失われるのではないか、こういったことが格段にテロのリスクを高めてしまうのではないか、国民は多分こういう不安を持っていると思うんですね。まさにテロという恨みの、つらみの連鎖、これがどんどん増殖するのではないかと。
 実は、この安保法制、テロに対しても対応するというふうに言っているみたいですが、国対国の戦争に関する法制、法案でありまして、国家でないテロに対する対応というのはまた別の議論なわけなんですね。なのにもかかわらず、この法案を強化することによってテロの脅威が高まるのではないかという、こういった矛盾を持っているわけであります。まさに法的安定性がなく、拡大解釈すれば、自民党さんが一生懸命否定している徴兵ということにもつながると。
 午前中も徴兵制はありませんというふうに議論をしていましたが、ここまで国民のまさに不安が高まっているのであれば、まさに信頼性の意味から、徴兵制は禁止するという法律を立ててもいいのではないかというぐらいな状況なのではないか。そうでないと、やはり国民の不安というのは払拭されない。今この「三つの不」の状態に、国民と政府の間にあって、これがこの法案を支持できない人たちが増えてきている現実なのではないかな、こう思うわけであります。
 じゃ、解決策どうしていくかということなわけでありますけれども、まさに今日の質疑の中でもさんざん出ていましたが、歯止めがない、国民の理解や支持を得ずに自衛隊が海外に出る、こういうことに対する不明、不信、不安をやっぱりなくしていくということが必要だと。自衛隊の隊員の皆さんにも、本当に命を懸けて職務を全うするのに、これだけ国民に支持されていないような例えば法制でもって本当に行けるのかどうかと、そういう心配もあるわけであります。
 まさに「三つの不」を取り除くためには、午前中の議論で総理は、国会の承認が歯止めになると、こう強調されています。
 であれば、是非御提案したいんですけれども、例外なき国会の事前承認と、もう一つとても大事なのは、途中段階そして事後の検証と国会への報告を行うべきだと、こういうふうに考えていますが、この辺り、歯止め論それから事後検証、法案を出し直す又は修正するということで検討するということは、総理、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 今回の平和安全法制の策定に当たっては、自衛隊の活動について民主的統制を確保するために、国会の関与について適切に規定することとしました。国会の関与が必要な活動については、国際平和支援法は例外なき事前承認としています。そのほかのものについては原則事前承認ではありますが、例外としての事後承認を認めています。例えば、存立危機事態や重要影響事態における活動の実施は緊急時の事後承認を認めておりますが、これを認めなければ我が国の平和及び安全の確保に支障を来す可能性があるわけであります。
 具体的には、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が事前に十分に察知されず突発的に発生し、またこれによって、間を置かずして我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある状況に至ることは否定できないわけであります。極めて短期間のうちにそのような事態に立ち至った場合には、国会承認の前であっても、並行して自衛隊に行動を命じ、まず何よりも国民の命と平和な暮らしを守ることが必要ではないかと考えています。
 また、PKO法に基づく活動の実施については、国会閉会中や衆議院解散中に活動の必要性が生じた場合、次期国会の開催を待っていては国際社会の期待にタイムリーに応えることができないことも想定されるわけでありまして、このように、やむを得ない場合には事後承認となることもあり得ますが、原則はあくまでも事前承認でありまして、政府としては可能な限り国会の事前承認を追求していく考えでありますし、また事後承認となった場合でも、不承認の議決があった場合には活動を終結させなければならないことから、歯止めとして機能しないわけではもちろんないわけであります。

山田太郎君 検証委員会はどうなのかという話はお答えいただけないので、後でまた引き続きやりますが、今の速やかに事後承認とか、今回の法律は等とか原則はとかいう、そういったやっぱり非常に法文上も曖昧、こういった話もすごく多いので、これが、何度も言うんですけど、やっぱり国民の不明、不信につながっているということを申し上げたいんですね。これを是非、総理には本来分かっていただきたいと、こういうふうに思うわけでありますが。
 もう一つ、答えていただけなかったんで続けて聞きますけど、検証委員会ですね。イラク戦争時が非常に、大量破壊兵器もなかったのに何だったんだということで、国民の間でも議論を呼んだところでありますが、アメリカとイギリスでは、それぞれ検証委員会による調査というのは実は行われています。イギリスの調査委員会は、大量破壊兵器の報告作成に当たって、様々な判断、いろんな情報を的確に分析し、批判し、オープンにやっていると、こういうことでもあるわけですよね。
 事後検証の必要性ということは、私は非常に重要だというふうに思っています。事後にチェックを受けると思えば、自衛隊の海外派遣中、勝手な拡大とか勝手な解釈、こういうことはできなくなる。今は、国会の承認又は法律にのっとっていれば政府はフリーハンドで何でもできると。こういうことでは結局、国民の不安それから不信というものは払拭できない。
 そういう意味では、やましいことがないんだったら堂々と第三者委員会を立ち上げて、きちっと事後のチェックを受ける仕組みをつくってはどうかと。これは、例外なき国会承認とともに我が党としても是非提案したい、こう思っているわけでありますけれども。秘密保護法においても、総理は最終的に国会に情報監視審査会を設置することに合意されました。このように、今回はもっと人の命が懸かっている重大な案件でもあります。国際的なリスクもある。そうなってくると、さらにこの事後検証といった辺りについても、まさに日本が本当に普通の国になるのであれば、他国が持っているようなしっかりした仕組みも今回位置付けて、修正、追加していただけないかどうか、この辺りも是非総理の方からいかがでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) イラク戦争に係る経緯については、外務省において当時の政策決定過程を検証して、もって教訓を学び、今後の政策立案、実施に役立てるとの目的の下、しかるべき体制の下で検証が行われ、平成二十四年十二月にその結果のポイントが公表されたものと認識をしています。
 また、イラク特措法に基づく対応措置の結果については、同法の規定に基づき、活動に至る経緯、活動の内容、実績、評価などを政府として取りまとめ、平成二十一年七月に国会に報告をするとともに、適切に公表をしています。
 平和安全法制においても、我が国による対応措置等の終了後、その結果について国会に報告すべきことがそれぞれの法律に明記をされております。これによって、本法制に基づき自衛隊を海外に派遣した場合には、国会報告を踏まえて、派遣の結果について事後に国会でしっかりと御議論いただくことができるものと考えております。

山田太郎君 時間になりました。
 残念ながら、今日の質疑は、結局、国民に対して不明、不信、不安というものが払拭できなかった、何も、何か前に進めて解決する姿勢ではなかった、私はそういうふうに思っております。是非、例外なき国会の事前承認、そして、途中、事後の検証と国会への報告の仕組み、これを求めて、私の質疑を終わりにしたいと思います。
 どうもありがとうございました。