2026.5.7
日本の「教育協力」の可能性!マンガ・アニメが果たす役割
4月17日に、自民党において国際協力調査会が開催され、教育分野を通した国際協力・発展途上国支援に関して議論が行われました。教育協力は「世界中のこどもに教育を与える」という目標を達成するためだけでなく、日本の国益を増やすために非常に重要です。私は国会が重なり出席できませんでしたが、参議院ODA調査団の一員としてオセアニア地域の訪問を行ったり、ウクライナ支援民の支援の視察にルーマニアとモルドバを視察した立場から、教育協力の重要性について本ブログで解説してまいります。
〈なぜ教育支援を進めることが日本にとって重要か〉
教育協力は安全保障、経済成長、また外交的主導権の確保といった諸分野において日本の国益を増進させるために重要な要素です。例えば、教育協力を通して高度人材を育成することにより途上国において指導者層・知識人階級を生み出し紛争・政治情勢の不安定化を予防できるという点で、日本の安全保障戦略に利すると考えられます。
というのも、現在でも世界中で約6000万人の児童が小学校に未・非就学であり、教育格差を放置することは、将来の不安定化コストを高めるからです。また、教育支援により将来市場の確保を目指せるだけでなく、少子化による人口減少や高齢化による労働力不足に直面する日本へ高度人材や留学生を誘致する基盤となるなど、経済的メリットを享受できることが期待されます。
加えて、教育協力の提供により、親日的信頼の獲得や教育分野の国際枠組みで主導権を握ることに資するなど、外交的にも日本の利益となります。このことから、「教育協力は最も長期的に効く国家戦略の一つ」といえます。
教育協力を重視するさらなる理由として教育、特に基礎教育の費用対効果が高いことが挙げられます。実際に行われた研究でも、初等教育が教育の中でも最大の社会的収益率を有し、インフラなどの他の種類の投資に比べても高い収益率を示すことが確認されています。

出典: “Returns to investment in education: a decennial review of the global literature” by George Psacharopoulos and Harry Anthony Patrinos, Education Economics,26(5)2018
〈日本の教育協力の「今」〉
教育協力には、日本と支援相手国との二国間教育協力の手法だけでなく、紛争・災害化のこどもへの緊急教育支援を行うECW(教育を後回しにはできない基金/Education Cannot Wait)や途上国の基礎教育を長期的に支援する、GPE(教育のためのグローバル・パートナーシップ/Global Partnership for Education)といった、教育に特化した機関を通した教育協力が存在します。しかしながら、現状では日本はECWにもGPEにも下図の通りほとんど出資しておりません。
そこで、こうした国際枠組みの中でプレゼンスを示すことで外交的発言力に繋がったり、外国諸国との連携強化にも資することから、ECW・GPEのような教育グローバルガバナンス・グローバル教育ファンドへの拠出の増加が必要であると考えられます。

出典:GPE公式サイト「 Share of cumulative 出典:Education Cannot Wait, 2021 Annual contributions by donor (2003 to February 28, 2026)」 Results Report , Figure8 “ECW’s donor contributions, 2016–2021, in million US$,” p.41.
〈ライフイズテック社によるアフリカ・ガーナにおける教育協力の実態〉
日本による教育協力の可能性の一例として、ライフイズテック社によるガーナでの教育協力プロジェクトを紹介します。ライフイズテック社では、「ガーナをアフリカNo.1のデジタル人材輩出国へ」というスローガンをモットーに中高・大学生へのデジタル教育や教員訓練を行なっており、その過程において提供するハードウェア機器や教員トレーニングまでを「オールジャパン」にすることや将来的にグローバルサウス諸国との長期的なパートナーシップを結べるよう、協力関係を促進することを通じて日本の国益の増進に貢献しています。
2025年には、TICAD9に先立ってガーナ教育省とのMOU(基本合意書)を締結し、2026-27年から3年間で、150万台の日本製タブレットPCを中学校に導入することが決まった他、ガーナの全高校(約50万人の高校生を対象)に情報教材を導入することが決められました。さらに、ガーナ版GIGAスクール構想(1人1台端末や高速大容量の通信ネットワーク等の学校ICT環境を整備・活用することによって、教育の質を向上させ、全ての子供たちの可能性を引き出す「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現することを目的とするプログラム)を始動させることができました。このように、教育協力を通して着実に日本へ利益が還元されるということを確認することができます。
〈日本のマンガ・アニメが果たす教育協力における役割〉
日本の教育協力をさらに独自性のあるものとし、効果を高める要素として、日本の「マンガ・アニメ」の活用が挙げられます。日本のカルチャーは世界中で高い人気を誇り、特にマンガやアニメは、言語や文化の壁を越えて人々の心を惹きつける強力なソフトパワーとなっています。
教育分野において、マンガやアニメは単なる娯楽にとどまらず、複雑な概念を視覚的に分かりやすく伝える優れた教材としての可能性を秘めています。
また、マンガやアニメは、日本語学習の強力な動機付けともなっています。国際交流基金の調査によれば、世界中の多くの若者がお気に入りの作品を原語で楽しみたいという思いから日本語学習を始めており、これは将来的に日本への留学や就労を目指す高度人材の裾野を広げることにも直結します。
さらに、マンガ制作のノウハウ自体を教育プログラムとして提供する試みも始まっています。クリエイティビティや表現力を育む教育として、日本のマンガ制作技術をオンラインプラットフォーム等を通じて途上国に導入し、新たな産業創出や人材育成に繋げる取り組みの推進は、日本ならではの教育協力の形と言えるでしょう。
このように、マンガやアニメを教育協力のツールとして積極的に活用することは、日本の文化的魅力を発信しつつ、相手国の教育課題の解決に貢献するという、まさに「日本らしい」国際協力の実現に寄与するものです。
〈今後の課題〉
教育協力における日本の今後の課題としては、主に1.プロジェクト保証、2.呼び水としての補助金、3.政府による後押しの三点が挙げられます。まず一つ目の課題として、協力相手国の信用をつかみ、プロジェクトの有効性を保証することが必要です。故に、資金融資や保険といった方法での政府による介入を視野に入れ、検討することが肝要です。
次に、日本式教育を導入する際のコストにより、導入を躊躇する国が存在するという課題があります。この課題は、初期コストを一部負担することで対処することが可能であると考えられます。最後に、教育協力は国単位の案件となる場合が多いという性質上、政府も協力し、外交ルートを通じて相手国の要人とコンタクトを取らなければなりません。官民双方が手を取り合い、事業を進めていくことが肝心です。
〈まとめ〉
教育協力は途上国の発展だけでなく、日本の成長をも助ける一石二鳥の政策であると考えられます。しかしながら、民間企業の力だけでは教育協力事業を進めていくことは困難であり、政府・官公庁が協力することが重要です。全てのこどもが教育を受け取ることができ、健康で幸福な生活を送っていけるよう、私も、引き続き取り組んでまいります。





