2015.7.31

もっと積極的な農業政策を!農協法改正案の質疑

7月30日、参議院農林水産委員会で質疑を行いました。

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【今日の質疑のポイント】
・日本の農業は、担い手(就農者)の確保が急務であること。

・政府は、すべての農業政策において担い手(就農者)をどのように増やすか、その視点での補強が必要であること。

・今回の農業協同組合法の一部を改正する法律案についても、もっと積極的な法人による農地所有の要件緩和や農業委員会による積極的な担い手(就農者)の確保が必要ではないかと質疑を行いました。

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【議事録】
山田太郎君 日本を元気にする会の山田太郎でございます。
冒頭、今回、安保特の方でも質疑をする予定がございまして、順番の入替え等、各会派、委員の先生方、大変御尽力いただきまして本当にありがとうございます。改めてお礼を申し上げたいと思っております。
さて、今回、農協法一部改正ということで、農業委員会の在り方、それから農地法の在り方ということも大きく議論となっているわけであります。
私は前回、農協の部分に関しては少し質疑させていただきましたので、今日は農地法それから農業委員会について少し質疑をしていきたいというふうに思っております。
お手元に資料の方をお配りさせていただいています。相も変わらずなんでございますけれども、担い手が足りないという危機をやはり何とか克服しなければならない、これが今回の私は農協法の改正においても最も重要な論点だというふうに実は考えております。ややもすると、農地バンクから始まり、特に農業委員会それから農地法の議論は、農地の問題というか土地確保の問題、その大規模化、これが言われるわけでありますが、どんなに土地にこだわっても規模を拡大しても、残念ながらその担い手がいなければ農業は衰退してしまうわけであります。そういった意味で、今回の計画の中で、しかも農協法という、農業の半分ぐらいも率いている農協さんの改革と併せて農業委員会それから農地法の改革もするわけですから、このことをしっかり捉えていく必要があるんじゃないかな、こういうふうに思うわけであります。
改めて、そんなところから論点入っていきたいと思うんですが、もう一回この表をしっかり見ていただきたいんですが、特に、もう一度、今日、しっかり見ていただいて質疑に入っていきたいのは、平成二十二年の現状と平成三十七年、つまり十年後ですよね、これを比べた場合に、スライドしてみますと、非常に恐ろしいと言っても過言ではないと思うんですけれども、数字の農業従事者、担い手を新たに育成しなければ本当に農業はもうやる人がいなくなってしまうと。
例えば、二十から二十九歳、例えば平成三十七年、展望ということでは十二万人にするんだと言っていますが、現状、その方々は十五から十九歳ということで、要は三千人しかいないわけであります。もちろん、これは就職すればぼんと増えてくるんでありますが。実は、その次、三十から三十九歳、十年後の農業者数は十五万人にするんだと言っていますが、現状、そのスライドしてくる、今六万人しか二十から二十九歳はいないと。そうなってくると、十一万七千人、九万人、六万人、二万人ということで増やさなければならない。これがこのまま推移していくと農業従事者は九十万人足らない。この農業従事者を増やしていくのに二万人毎年増やさなきゃいけないんだけれども、足下一万人が精いっぱいというのが残念ながら現状だということが今この農業界の置かれている私は最大の危機だと。ここに対して今回の改革がどこまで寄与するのか、このことをもう一度しっかり質疑していきたいというのが今日の主題のテーマになってきます。
まず、農地所有に関して少し話をしていきたいと思いますが、今回の改革は、御案内のとおり、農地所有、法人についても緩和をするというような内容であります。ただ、緩和をするといっても、株式の関係でいきますと、農業関係者以外の総議決数が二分の一以上でなければならないということで、簡単に言うと私はちょっとこれはまだまだ厳しいんではないか、むしろ役員の要件であるとか株式のいわゆる農業者の持つ比率というものもいっそのこと撤廃してしまうのも手ではないかと。
なぜならば、こう言うと抵抗ある方もいらっしゃるかもしれませんけれども、もはやどんな法人であったとしても農業をやっていただける方が入ってくるのであればもうウエルカムと、こういう考え方もあると思っていますし、農協さんも当然、もはや、地域協同組合として金融、共済もしておられるような現状の中でそれとのコラボレーションで何とか維持していると、こういう実態を考えれば、新たに入ってくる農業法人自身が、いわゆる資本を集めるのに当たって農業関係者の資本が半分以上なければならぬということではなかなか増やせないんではないかな、そこまで私は来ているというふうに思っております。
もちろん、農業者だけでやれる団体が日本の農業を支えていけるのであればそれにこしたことはないと思うんですが、現状の厳しい状況を考えた場合に、緩和の要件はまだまだ甘いんではないかな、こういうふうに思うんですけれども、この辺り、農水大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(林芳正君) 企業の農業参入につきましては、平成二十一年に大きな改正を委員御案内のようにやりまして、リース方式の参入が完全に自由化をされました。法改正前と比べて約五倍のペースでこの参入が進んでおります。
今、農業界と産業界と連携して前向きに推進していけるような状況になってきておりまして、ちょっと前ですとやはりいろんな懸念がございましたけれども、実際に入ってきてもらえると、うまくいっている例では、入ってきてもらってよかったということで、受け止めの方も変わってきていると、こういうこともございます。
そういう意味で、参入企業は地域の農業の担い手になり得る存在でございまして、農業の発展にも大きく貢献をできるということでございますから、今お話のあったように、担い手の不足する地域で企業がリース方式で参入していただくことを期待をしております。
今お尋ねの所有の方でございますが、先ほど少し申し上げましたように、懸念の方では、やはりこの二十一年農地法改正後は減ってきておると思いますけれども、それ以前からあった懸念として、撤退をしてしまう、なかなか採算が合わなくてですね、そこが所有ということになりますと、そのまま、持っておられるままということでございまして、結果として産廃の置場になってしまう、こういう懸念が農業、農村の現場にあると、こういうことでございます。
こういうことも背景にございまして、今回の御提案ということで申し上げているのは、こうした懸念のない範囲で六次産業化等の経営発展の障害を取り除く、こういう観点で農作業従事要件や役員の構成員要件、こういうものを、また出資比率を見直すことにいたしました。
更なる要件緩和ということにつきましては、六月二十四日、昨年でございますが、二十六年の六月二十四日に決めました日本再興戦略で、農地中間管理事業の推進に関する法律の五年後見直し、これ規定されておりますが、これに際して、それまでにリース方式で参入した企業の状況等を踏まえつつ検討すると、こういうふうに決められておりますので、この政府の方針の下に検討していきたいと、こういうふうに思っております。

山田太郎君 株式会社になった場合に土地を所有して撤退したらどうなるのかという議論はさんざんしてきましたが、今の耕作放棄地を必ずしもつくってきたのは別に株式会社が原因だったと思えない。農家であったとしても、支え切れない方々がやはり耕作を放棄してしまったというケースもあるわけでありますから、一概に株式会社方式が悪いからリース方式にするとか、逆にリースだからといって株式会社から農地を返されたところで農家だってやっぱり困ってしまうんじゃないかなと、こうも思うわけであります。むしろ私は、そのことよりも、であれば、農地の適正利用、つまりゾーニングの強化ということを逆にすることによって、農地は農地として使うんだということをきちっと規制した方がいいんではないかと。
例えば、ゾーニングといえばヨーロッパが非常に厳しいということは御承知だと思いますが、日本の場合は特例による開発要件がやっぱり多くて骨抜きになっているんではないかというような声もあります。それから、例えば日本は、市街化区域、地域の農地が線引きされれば届出だけで転用可能になってしまって、その地域の農地は減少していく傾向にあるとか、転用許可は農業委員会の裁量の余地が非常に大きいということで転用される。あと、違反して転用されたとしても、現実的には事後に許可されることが多くて、なかなか実際に罰則になった事例は少ないと。これ農水省さんにも調べていただいたんですが、二件ほどの報告しかなかったということなわけなんですね。
そういった意味で、耕す人だとか株式会社だとかというところに対してはもうちょっと寛容に、むしろ農地を守るということであれば、その用途に関しては厳しくというか、そういうふうにする方が私は担い手は入りやすいんではないかなと、こういうふうに思うわけでありまして、是非その辺り、ゾーニングとの関係ということで大臣の方にお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

国務大臣(林芳正君) 農地につきましては、農業振興地域の整備に関する法律というのがございまして、農業振興地域内において農用地区域を設定すると、こういうゾーニングの手法を取って規制を行っておりまして、この農用地区域内においては転用はできない、こういうことになっておりますが、このゾーニングというのは土地の利用の仕方を指定するということまででございますので、実際に耕作することを強制する、また農地の権利移転を規制する、こういう機能はそもそもゾーニングという手法にはないということでございますので、ゾーニングのみではこの耕作放棄、それから資産保有目的の権利取得を防止する、こういうことがなかなか難しいのかなと、こういうふうに思っております。

山田太郎君 ならば、もう一個、アイデアなんですけれども、耕作を放棄された農地への税金優遇をやめるべきではないかと、こういう考え方もあるんですよね。今、耕作放棄地も農地の地目になっていれば、所有者は固定資産税が減免されると。これは耕していても耕していなかったとしても同じということでありまして、であれば、農地法の例えば三十二条なんかには、農業委員会は利用意向調査の責務も持っているわけですから、こういうもの等をきちっと発動して、税金に対する見直しをしてもいいんじゃないかと。
もう一つ、兼業、専業というところもあると思いますが、やはり専業で農家をやっているということに対する税制の逆に優遇、税金によるインセンティブ、誘導ということをすることによって効率的に土地が担い手に回る、こういったことも考えられると思うんですけれども、いかがですか。

国務大臣(林芳正君) 農地の税制というのは、やっぱり農業をやるということに着目して比較優位が、優遇をされている、こういうこともございまして、そういう意味では、我々としても耕作放棄地の解消、それから担い手への利用の集積、集約化、これは重要な課題だと思っておりますので、実は平成二十七年度税制改正でございますが、去年の年末に税制改正の議論をいたしましたときに、中間管理機構に貸し付けた農地については、固定資産税を非課税とする、それから有効活用されていない、逆に遊休農地については課税を強化すると、インセンティブとディスインセンティブを組み合わせたような、こういう要望をいたしましたが、最終的に調整が付きませんで、与党の税制大綱では、農地保有に係る課税の強化、軽減等の方策について総合的に検討すると、こういうふうに記述がされたということでございます。
今年の六月三十日に日本再興戦略の改訂二〇一五というのを閣議決定をいたしておりますが、ここにも政府としても、農地の保有に係る課税の強化、軽減等によるインセンティブ、ディスインセンティブの仕組みについて、本年度に政府全体で検討し、可能な限り早期に結論を得ると、こういうふうに書いていただきました。
したがって、今まさにこの二十八年度税制改正、今年の年末にも想定されますが、それに向けて検討をしておるところでございます。

山田太郎君 まさに今大臣が言われたことを与党内でもしっかり推し進めていただいて、私はこの辺りが一つ決定打になる、こういうふうにも思っておりますから、やはり耕作していない土地はどう考えても農地ではないので、その辺りにまで優遇する必要は決してないだろう、それが結局、耕作放棄地を持っていてもそのままなおざりにされている最大の理由ではないかと、こうも思いますので、是非しっかりやっていただければと思っております。
もう一つ、どういったところが遊休農地なのか、耕しているのか、どんな地目なのか、こういうことで今農地ナビというのを今年の四月からやられているということをお伺いしております。ただ、この農地ナビ、担い手を増やすという意味においてはどういうふうに使っていけるのかなと。単に土地の管理ということをしたとしても、これが新たな担い手に対してどういうような形で例えば貸し付けられるとか、新しく農業をしたい人たちがどう活用すればいいのか、こんな辺りが是非分かればお答えいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

国務大臣(林芳正君) 地域における農地集積や集約化、それから耕作放棄地の発生防止、解消、こういうものを進めるために、やはり農地の利用状況等、今お話があったように、耕作しているのかしていないのか、また耕作している場合も、どういう形態でどういうものを耕作しているのか、こういうことをデータベース化しまして、これを電子地図上に表示して、誰でも見られるようにすると、これが重要だと思っておりまして、一昨年の臨時国会で農地法の改正がありましたが、ここで農地台帳と電子地図の公表というのが義務付けられました。本年四月から、今取り上げていただいた全国農地ナビということで、インターネットによる農地情報の提供開始をいたしました。
今後、この農地ナビの更なる活用を図るために、農地中間管理機構等のシステム利用者等との協議を通じて、そのニーズを把握をした上で、どういったニーズがあるのかと、こういうことをお聞きしながら、利便性、効率性というのを更に向上をさせていくということと、それから最新の農地情報、これを速やかにこのシステムに反映できるようなものに構築をしていくと、こういうふうにしておりまして、こういうことをしていくことによって利用者にとっての利便がますます向上するように、一層の機能向上をやっていきたいと思っております。

山田太郎君 私も昨日、実はこの農地ナビをいじらせていただきまして、非常に面白い、リアルな地図とそれぞれがマッピングされていて、私の親の実家の方の農地とか、なるほどこんなになっているんだなんというふうにありますので、これもっと宣伝していただいて、かなり私は、今回、農水省さん、これは頑張ったというふうに思っています。ただ、使わなければ宝の持ち腐れですし、残念ながらまだ項目が、相当調べられているのは見たんですが、項目がまだまだ不備みたいなところもあるようですので、これ育てていくというのは一つ新たないわゆる農地の展開といったところにつながるかと思っていますので、引き続き頑張っていただければというふうに思っております。
さて、農業委員会の方に少し話を移していきたいと思いますが、私、担い手をどうやってこの農業委員会が増やしていけるのか、こういった観点からも、もう一つ議論をしていきたいというふうに思っております。
今回、農業委員会の改革だけではなくて、全国農業会議所といったものを、いわゆる全国のセンターみたいな改組もするということが入っております。そういったところについても私自身実は注目しておりまして、どういう点から今回注目したかといいますと、どうやったら担い手が全国レベルで、都道府県の単なる単位、あるいは農業委員会さんのちっちゃな単位だけではなくて、いわゆる情報を提供したり集めてきたりすることができるのかなということで、ちょっと農水省さんには骨を折っていただいて、担い手を確保するための関係機関がそもそもどれぐらいあるのかということを全部洗っていただいて、じゃ、担い手確保のために何をしているのかということについても、少しジョブディスクリプションというか、この辺りを挙げていただいたんですが。
逆に、これを作っていただいてびっくりしたというか、確かに不十分だなと思いましたのは、関係各所、四つぐらいしかないと。一つは今の全国農業会議所といったところ、それから都道府県の農業会議、それから農業委員会、市町村そのものですね、こういったものしかないんですが、その中で見ても、実は認定とか支援というふうに書いてあるだけなのであって、人材の開発とか、探索とか、あるいは情報の普及とか、つまり探してきたり育てるというところに関してほとんど見当たらないんですね。これ、待ちというか、どうしても仕事が受け身のような状況になっているというふうに思っています。
何となく、今回の農業委員会等の改革が、どうしても土地にまつわる話がやっぱり主で議論されてきた私は嫌いがあると思っておりまして、この担い手を確保するといった辺りに、もうちょっとそれぞれの組織、これからお金も付け、改組していくわけですから、新たに機能を持たせていただいて、本当に先ほどの、九十万人ですよ、これを集めていくことを全力を挙げて、これは政府も国も、農業を本当に維持するためには最大の必要な試みだと何度も思っておりますので、その辺り、もうちょっと組織の改組に関して担い手を集めるというところに対して考慮したり機能を付加することはできないだろうか。この辺り、また大臣の方にお伺いしたいと思います。

国務大臣(林芳正君) この成長産業化等々やっていくために、農地の集積、集約化、これ大事ですが、まさに農地が集積されても、それをやる人がいなければ絵に描いた餅になりかねませんので、やはり新規参入者の促進等々やって、担い手の育成確保、これを進めていくことは大変大事だと思っております。
これまでも、今挙げていただきました認定農業者、新規の就農者の認定を行う市町村、それから新たに就農しようとする青年等の相談に応じるなどの活動を行う拠点である青年農業者等育成センターの確保、これを都道府県が行うと、こういうふうになっておりますが、さらに、農地を利用する場合に農業委員会があっせんを行う、それから、農地の転貸先である担い手を公募する農地中間管理機構、これ、公募に応じて、やりたいと言ってきた人というのは一種の担い手のデータバンクと、こういうことになろうかと思いますので、ここも入ってくると。そして、農業法人の設立支援や就農相談を行う県や全国レベルの会議所と、ここが連携をしながらやってきたところでございますが、今回の改正では、農業委員会について、やはり現場で新規参入が促進されて、担い手、農地の利用の集積、集約化が調整、相談活動されるように、まず農地利用最適化推進委員というのを新設をすることにいたしました。
また、県、そして全国の農業会議所についても、農業委員会の活動をサポートするネットワーク組織ということで見直しまして、指定法人に移行した上で認定農業者制度の普及啓発、まずやっぱり知っていただいて、こういう制度がありますということをやる、また法人化をしていく。
それから、認定農業者協議会というのがございますが、こういう担い手を組織化していって、声を上げてもらう、それから新規就農、就農希望者への相談、こういう担い手関連の業務、これを法律に明記して安定的に行っていこうと、こういうことにいたしました。
こういうふうにして、今回の法改正で農業委員会そのもの、またこれをサポートするネットワーク機構、こういうところの活性化を図って、より各関係機関の連携の進むことを我々としてもしっかりサポートいたしまして、担い手をしっかり確保して成果を上げていきたいと思っておるところでございます。

山田太郎君 まさに担い手バンク、これこそ今必要ではないかなと。くしくも大臣の方がおっしゃられました。私もそこをこれから質問しようと思っていたんですが、農地バンクがあるんだったら、担い手の人たちの、任せたいという側もいると思うんですね、やりたいという人をどうやってマッチングをうまくやるのかといった辺りをどこかでしっかりやる。ただ、残念ながら、余り私は今回の組織改革はそういったところに踏み込んでいるようには思えないので、もっと一生懸命踏み込んでいただければというふうに思っております。
もう一つ、確かに、でも組織をいじっていくということは法律であり、国会での議論の対象なんでしょうけれども、やはり仏に魂入れずんば成り立ちませんし、だるまさんには目入れていかなければしようがないんですけれども、何が言いたいかというと、要は私、実は旭川の方に農業の現場の視察で見学させていただいたときに、こんな話があったんですね。
旭川の郊外で、北海道出身の議員がいらっしゃるので知っていらっしゃるかもしれませんけれども、結構旭川の郊外の土地が非常に水はけ等が悪くて苦しかったと。当初は、畑も大変なところでありまして、新規の就農者なんていうのは、来たら、はっきり言って村八だと。悪い土地を正直与えて、やっぱり新しい人じゃ農業はできないじゃないかと、農業を、耕作するんだったら、十年、二十年掛かるんだといって追い返していた。でも、それじゃ、もう村、町自身が終わってしまうということで、積極的に優良な農地をそういう新しい人たちに提供するといったことを含めて非常に改善してその地域が良くなった、こんなこともあったと思います。
農業がやっぱりもう一つ見えてこない。今回の議論の中でもまさに泥臭いような部分ですが、肥沃な土地というか、土地の性質というものもあると思っています。こういったものまで含めて、担い手に対しては優先的にというか、もうこれは現場の努力としか言いようがないのかもしれませんけれども、何かそういった、しっかり農業が、担い手の人たち、いきなり来ても正直言って難しいと思います。だからこそ、株式会社に一旦参加をしながら覚えていって自立するというやり方もあると思いますが、土地との関係をもうちょっと今回解いてあげないと、はっきり言って新たな担い手が、それは何万人という形でもってとてもじゃないけれども育ってくるとは思えない。ほとんど入ってくる人は、私も最近この委員会に参加させていただいたので毎年畑仕事をさせていただくけれども、奥が深いなということを改めて感じたわけでありますが、所詮私もど素人で、私が田んぼだの畑だのやったら大体枯らしちゃうと思うぐらい、やっぱり難しいんだと思うんですね。その辺りをどういうふうにできるか。
先ほどの農地バンクとそれから人材バンクを組み合わせたような、もっと積極的な研究をしっかり担い手に対して、来たとしても絶対失敗させないというんですか、せっかく来た担い手を潰さない。一万人しか増えないという中で、何人かは結局やめちゃうんだよねという議論もかつてあったと思うんですけれども、そうさせない仕組みということをどうしたらいいのかな、その辺りの研究を進めていただいて、あらゆる手段、もしかしたらお金も使ってその辺りはやるべきだと思いますが、その辺りも是非大臣の方から、これはもう答弁というよりはお考えというかコメントでも結構でございます、アイデアでもいいです、何かいただければと思いますが、いかがでしょうか。

国務大臣(林芳正君) 大変大事な、本質的なお話だと、こういうふうに思います。
私も、印象的だった記憶がありますのは、初老のもう随分ベテランの農家の方とお話ししていて、自分も初心者なんだ、まだほんの五十回ぐらいしかやったことないからねと。五十年やっておられて五十回、毎年違ったことをやってチャレンジの連続であった、こういう意味だったと、こういうふうに思いますが。
やはり、今いみじくも先生がおっしゃったように、奥が大変深いし、ある作物に対して肥沃な土地がほかの作物にとっていいかどうか、これも土地によって様々であろうと。適地適作という言葉がありますが、最近、薬用作物ですね、漢方薬の原料というのは、むしろそういう普通の我々が想定するような平たんな肥沃なところよりも、傾斜がきつくて岩がちなようなところにそれでも生えてくるような薬草の方が強い、いい薬草になると、こういうお話も聞いたことがございますが。
したがって、一概にいいところを今いる人が全部確保して、新しい人がやる余地がないと、こういう白黒一律的な考え方というよりは、みんなで、民主党時代にスタートしていただいた人と農地プランというのもございますけれども、そういうものもいろいろ活用しながら、要は、私の個人的な印象でいうと足し算ではないかなと思っておりまして、誰かが入ってくれば誰かがいなくなるということであれば、これは差引きゼロということですが、いろんな方がいろんな形態で、規模の大きい人、小さい人、いろんな形態の人が入ってきてそれぞれ違ったことをやっていても、全部足していくとトータルとして農業の生産というのが活性化して、よってもって所得も増えていく、こういう形ではないのかなと、こういうふうに思っておりますので。
制度は、今御議論いただきましたけれども、基本的にはそういう考え方でもって、地域の自主性とか、そこの特色を生かした作物作りと、こういうようなものをそれぞれがやっていただくような仕組みをしっかりと推進をしていくように、制度を作っていただいた後も運用でも心掛けていきたいと、そういうふうに思っております。

山田太郎君 そろそろ時間になりましたのでまとめたいと思いますが、私は、今回の様々な改革、政策が、いわゆる三百万ヘクタールというものを維持するということに論点を置けば、いつも言うんですが、一人十ヘクタールを本当にできるのかという議論になって、非常に現場は、大規模化だけを目指されて非常に負荷が掛かる、楽しんで農業をやるというよりも農業を維持するための農業ということになりかねない、こういうふうに思っております。これでは新規就農者も今までの人たちも続けられないと思っております。
タブーを犯して言わせていただければ、地方に行けばそれこそ人手不足です。本当に新規就農者が集まるかどうかなんて分からないです。そういう現実を我々は見据えた上で、もしかしたら撤退しなければいけない農地ということも本気で議論して、集約という形ですらもはや考えなければ、今までの高度成長にあった、あるいは人口が増えている時代とは違うんだ、我々自身が新しい時代に立っているということを岐路として少し議論を私は深めるべきなんじゃないかなと。
例えば、中山間地に対して、何とか維持していこう、これはこれで一つの議論かもしれません。しかし、そこに耕す人が本当にもういないとするのであれば自然に返すという考え方だってやっぱり必要でありまして、今までそんなことを言えば多分この委員会では大変なバッシングがされたのかもしれませんが、でも、現実的には、人がもう大事なんだという形にして、もうとにかく来ていただいた人は撤退しないように、どうやったら成功させられるのか、新しく来ていただいた方には楽しく続けていっていただけるのか、そういった視点に我々立って国会でも議論しなければ、この話の先には、農業は幾らどんな制度、お金をいっぱい付けても破綻しちゃうのかなと、こう思っておりますので、引き続きそういう視点でもって質疑させていただいて、政府には是非頑張っていただきたい、こういうふうに思って、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。