2026.7.6
【こども家庭福祉政策は、このままでよいのか】
6月11日「児童の養護と未来を考える議員連盟」の総会が開催され、私、山田太郎も参加しました。総会では、乳幼児の「家庭養育優先原則」が定められた平成28年改革から10年を経たにもかかわらず、重要な目標の一つであるこどもの里親委託率の改善が十分でないことなどを受け、省庁に向けた提言案を議論しました。
私自身も、旧来より取り組んでいる日本版CAC(Child Advocacy Center:チャイルドアドボカシーセンター)制度の普及に向けた取り組みの進展や、CDR(Child Death Review)制度の導入に向けた議論の必要性について提起しました。
一見難解そうに聞こえるこれらの制度ですが、いずれもこども家庭福祉のさらなる拡充のためには欠かせないものです。そこで、このブログではこれらの制度についてわかりやすく解説しつつ、こども家庭福祉の最前線に迫ってまいります。

■こども家庭福祉の問題点
議員連盟ではまず、こども家庭福祉の現場に以下の7つの課題が残されていることをまとめました。
- 乳幼児に対する「家庭養育原則」の不徹底
- 施設の「高機能化」について
- 施設の「多機能化」について
- 大舎制施設や小規模ユニットケアの残存
- 「こどもの多様なケアニーズに応じた支援や措置費」の問題
- 特別養子縁組成立後の経済的支援等の不備
- 一時保護施設における一時保護期間の長期化
これらの諸問題は、平成28年改革を経てもなお残存する問題であり、対策として6つの重要政策(1.こども家庭福祉施設の体制強化、2.代替養育の抜本的改革、3.家庭復帰・自立支援、4.養子縁組・特別養子縁組支援の抜本的強化、5.人材養成・育成、6.科学的エビデンスの蓄積)の実施を担当省庁であるこども家庭庁に改めて求めました。これらの政策について、順番に紹介してまいります。
■こども家庭支援施設における体制強化
こども家庭福祉の拡充のため、まず、こども家庭センターなどの支援施設の体制の強化が必要です。
例えば、妊産婦や子育て家庭に向けて相談支援や専門機関との橋渡しなどを行うこども家庭センターでは、まだ設置されていない自治体もが14%あり、自治体間の格差是正を図ることが求められています。
加えて、こども家庭福祉施設の多機能化に伴い、職員への研修の見直しが必要です。社会的養護施設での法定研修の内容がアップデートされていない現状もあり、各種研修の総合的見直しの必要性です。また、児童虐待防止や複雑な家庭環境にある子どもたちを支援するために2024年に創設されたこども家庭庁管轄の認定資格である「こども家庭ソーシャルワーカー」に関しても、累計1322人が資格を取得しているものの、令和6年度には703人、令和7年度には619人と資格取得者は減少傾向にあります。そこで、認定者数を増加傾向へとシフトするため、当資格の国家資格化が提案されました。
こども政策を推進する一方で、現場の状況は逼迫しているとの声は、決して無視してはならず、業務の魅力度向上に向けた取り組みや助成金の活用によって、こども家庭福祉施設がこどもに十分な支援を届けることができるような環境づくりをしていくことが喫緊の課題です。

(図)「こども家庭センターを中核とした包括的・継続的支援」(こども家庭センターポータルサイトより引用)
■「家庭養育優先原則」に則った代替養育の抜本的改革
虐待や養育困難などにより親元で暮らせないこどもに対しては、我が国では平成28年の児童福祉法改正などを経て、「家庭養育優先原則」という、施設ではなく里親や養子縁組などの「家庭的な環境」で優先的に育てるという方針が掲げられ、社会的養護の基本理念として位置付けられています。しかしながら、議員連盟では「家庭養育優先原則」が徹底されていないとして、より一層推進するための抜本的改革が必要です。
この原則の根幹には、「里親・養子縁組によるこどもと特定の大人との愛着を形成する」、という目標があります。そのため、従来の乳児院(様々な事情で家庭での養育が困難な乳幼児(原則0歳〜未就学児)を、保護者に代わって24時間体制で養育する児童福祉施設)は「家庭養育優先原則」にそぐわず、少なくとも新設はすべきでないと考えます。代わって、こども家庭庁が推進する、「乳幼児ファミリーホーム」(仮称、何らかの事情で家庭で暮らせないこどもたちを、経験豊かな養育者が自宅などの家庭的な環境で迎え入れ、養育する仕組み)で乳幼児を受け入れ、愛着形成を重視したきめ細やかなケアを行うべきです。
さらに私からは、社会的養護を必要とするこどもの安全を迅速に確保し、適切な保護を行うための基本原則を示した、こども家庭庁の「一時保護ガイドライン」について、技術的助言にすぎず、「家庭養育優先原則」に則って施設による一時保護の期間を短縮し、なるべく早くこどもを安心できる大人のもとに預けるべきであるとの意見を述べました。
全てのこどもが、愛情を浴びて育てられる環境を作っていけるよう、「家庭養育優先原則」の徹底は不可欠です。

(図)こども家庭庁「社会的養育の推進に向けて」より引用
■日本版CACのあるべき姿は?
こども家庭福祉政策の推進において、私が重要視する政策の一つが、日本版CACの普及です。CAC(Child Advocacy Center)とは、1985年にアメリカで発祥した制度であり、虐待や暴力の被害にあったこども、あるいはその目撃者となったこどもに対し、「こども中心(Child-first)」の視点で、精神的・肉体的負担を最小限に抑えながら支援を行うことが特徴です。従来の制度では、児童虐待が疑われると、こどもは警察、児童相談所、病院、検察などで何度も同じ辛い体験を説明させられることが多く、これが「二次被害(セカンドトラウマ)」としてこどもの心を深く傷つけていました。
そこで、CACの下では、これらの専門機関を一つのチーム(MDIT、Multi-Disciplinary Team)として統合し、専門家たちがこどものいる一つの場所に集まるというアプローチが取られます。例えば司法面接では、特別なトレーニングを受けた専門家が子どもに負担をかけない方法で、誘導を避けながら聞き取り(録画・録音)を行い、そのやり取りを警察や児童相談所の担当者が別室のモニターで見守ることで、何度も同じ話をさせる必要をなくします。また、小児科医やトラウマケアの専門家がこどもに寄り添ってサポートをするほか、裁判や福祉の手続きなど、複雑なプロセスに対して伴走支援が行われます。
この制度は現行制度の下で性被害にあったこども、それによりトラウマに苦しむこどもを守るために、必ず導入しなければならない制度であると私は考えます。我が国においてこども家庭福祉をより手厚いものとするためには、本制度の導入に向けて、最優先で取り組まなければなりません。
■養子縁組・特別養子縁組支援の抜本的強化
「家庭養育優先原則」に基づいて、養子縁組・特別養子縁組を進めることが肝要であるものの、養子縁組成立後の経済的支援を含むサポート体制の強化、支援機関の明確化、特別養子縁組に係る官民の扱いを超えた各種情報の一元化、および出自を知る権利の明確化など、様々な課題が残ります。
特に出自を知る権利に関しては、日本では制度の確立がされていません。この点を踏まえ、今年の2月には韓国の児童権利保障院や養子縁組に関連する施設を訪れ、意見交換をしてまいりました(視察ブログ)①https://taroyamada.jp/cat-kind/post-48615/②https://taroyamada.jp/cat-kind/post-48634/③https://taroyamada.jp/cat-kind/post-48648/)。
支援を必要とするこどもに対しては、養子縁組の成立等までをサポートするだけでなく、その後もこどもの成長に合わせた各段階において絶え間ない支援を行わなければなりません。そのためにも、日本での「出自を知る権利」の法制化が急がれます。
■科学的エビデンスに基づくこども家庭福祉〜CDRの法整備化
もうひとつ、私が取り組んでいる重要な施策は、CDR(Child Death Review:予防のためのこどもの死亡検証)です。CDRとは、医療機関や行政をはじめとする複数の機関・専門家が連携して、亡くなったこどもの事例を検証し、予防策を提言する取り組みで、予防策を導き出すことで未来の防ぎうるこどもの死亡を少しでも減らすことを目的としています。令和2年度からは、群馬県や香川等の複数の自治体でモデル事業としてCDRの取り組みが実施されています。
しかしながら、現在の「モデル事業」での仕組みは海外の実施先進国のものとは大きく異なります。アメリカやイギリスなどのCDR先進国では、「こどもの死因を究明し、次の命を救うことは社会全体の義務である」という思想のもと、「法的な義務」として、遺族の同意の有無にかかわらず、すべての死亡事例の情報を集める権限が検証委員会に与えられています。
現状では、実証事業を行う自治体の現場において、保護者の同意の取り付けや警察の捜査情報、司法解剖の結果の共有などにおいて課題があることが指摘されています。しかし、このままでは「未来の防ぎうるこどもの死亡を少しでも減らす」という目標の達成には至りません。この制度の確立のためにも、早急にCDRを「法的な制度」と位置付けるべきです。

(図)こども家庭庁「CDR実施のイメージ」
■まとめ
このブログでは、家庭養育優先原則、CAC、CDR等、日本の児童福祉政策における最新の取り組みを紹介してまいりました。これらの制度は、いずれも虐待を受けた児童を保護したり、その後に安心した生活を送れるように支えるものです。引き続き、すべてのこどもが安心して幸せな生活を送っていけるよう、積極的に活動してまいります。





