2022.10.26

妊産婦と子どもの命を救う!福岡市の産前・産後母子支援センター(こももティエ)を視察

写真)こももティエ 大神 嘉 施設長と私(左)

5月30日、福岡市の産前・産後母子支援センター(こももティエ)を視察しました。
現在の日本では、出産後の死因の1位が自殺、虐待死でもっとも多いのが日齢ゼロ(生まれたその日に亡くなってしまう)、産後うつになるお母さんは2割以上。そんな孤独・孤立化する妊婦に徹底的に寄り添って解決している先進的な事例です。

 ■視察を終えて

今回の視察で、産前産後の母子保健を手厚くすることが、虐待防止に極めて重要であると再認識しました。精神疾患や発達障害、DVなど難しいケースが増えている中で、現在のように期限付きの支援では、その後の支援が切れると虐待が再発します。リスクの高い家庭に対し、産前から、産後は親と子のそれぞれの支援ができるノウハウがある母子生活支援施設を充実させていくことが重要です。また、被害者である女性だけが逃げなければいけない現実に大変疑問を感じます。男性側の性教育や、親としての自覚についての教育もしっかりとなされるべきです。

4月に成立するこども家庭庁では、成育部門の中で、「妊娠・出産の支援、母子保健、成育医療等」妊娠期から子育て期にわたるまでの包括的かつ継続的な保健施策に取り組むとともに、虐待や貧困などの複合的な要因を抱え、居場所がない若年妊婦への支援に取り組

むことが決まりました。これまで縦割りを打破し、包括的な支援が地方でしっかりと実施されるよう、私も全力でバックアップしていきたいと思います。

■産前・産後母子支援センター(こももティエ)とは?

 こももティエは、妊娠相談、妊娠期の子育てサポート、お母さんと赤ちゃんが安心できる住まいづくり、日常生活支援、育児支援と、妊娠から出産後まで包括したサポートを行っているセンターです。

施設長の大神さんに施設の特徴を伺いました。

子育て葛藤に関する敷居の低い相談窓口がないこと、その場しのぎのこども預かりの現状を改善したいと思いこの施設を始めました。ここは、困難な課題を抱える子どもと女性への総合支援を実現しています。例えば、ペアレントトレーニングをいれたり、保育士といやいや期対策をしたり、就労支援まで行います。これまでは、通所で改善できる場合もありましたが、コミュニティから切り離されていました。そうではなくセンター型で・短期、中期、長期の時間軸を見て利用者に最適なことを提案していくことができます。こももティエは半年利用可能で、母子生活支援では年単位で可能です。24時間一元管理をしており、病院とも連携できてきています。現在建設中のトータルサポートセンターももちでは、さらに幅広い支援ワンストップ支援機能を有します。電話やメール、LINE相談からの相談も多いですが、現在の体制は3名のコーディネーターで24時間365日対応し、8時半~5時半が専門職員です。」

写真)産前産後専用室

私からも、現状についてかなり踏み込んで質問し、実際の事例や今後の具体的課題について教えていただき、政策立案において大変参考になる議論でした。公開できる範囲で質疑応答の一部を紹介します。

Q:相談はどのようなルートでくるのでしょうか?なぜ、行政はつながらないのに、ここに繋がれることができるのでしょうか?

A:色々なアプローチをしていますが、今はTwitterからはいってくる場合が多いですね。携帯電話料金を払わずに使えない人が多いので、フリーWi-Fiの場所を提供したり、高校生の妊娠の情報出したりもします。相談名刺を薬局の妊婦検査薬の所に置かせてもらおうと訪ねていますが全滅です。自己管理のせいだという風潮です。学校への出張授業で性教育教えようとしても「妊娠を許容するのか」といって学校側からNGがでる現状です。

Q:これまで支援をうけていなかった若者たちには、どのようにアプローチしているのでしょうか。

A:特定妊婦は、妊娠以前に福祉的サポートが必要だった人が多いというのが現状です。例えば、小学校3年生から不登校だった学生が妊娠した場合等、どこにも相談につながらない人もいます。このような繋がりがなかった人はコーディネーターが自宅に訪問することを嫌がりますが、『同伴して費用を負担するから一緒に検診しよう』というと来てくれるのです。同行支援までしている理由は、やっていて必要だと感じたところからです。特に多いのが14-19歳の相談で、「妊娠したかもしれない」という相談は、あえて遠い県外からも多くあります。

パートナーには私が電話しますが、来てくれた人は10名中1人くらいです。例えば、パートナーが既婚者の場合、話をして現在でも子どもの認知や養育費までサポートしてもらう場合もあれば、経済支援を全くしてくれない場合もあります。30代の相談は療育手帳を持っていたりする場合も多く、障害を地域で支えられていなかったケースです。支援につながる以前に福祉的サポートを充実させていくことも重要です。

Q:現在力をいれているネット相談では、全国からの相談がくるのではないでしょうか。そういった場合はどう解決するのですか。

ネットで入ってくるので、確かに札幌などの遠方からの重篤相談もあります。その時に事業者ネットワークがないため、支援につなげられません。各都道府県で連携する必要があると思い、東京、大阪の母子支援施設とはつながり始め、大都市間では勉強会を開始しています。

例えば、父親からの深刻な性虐待の相談をうけたので、すぐ市内の児相にいきましたが該当者いませんでした。Twitterで発信場所が絞れたので、警察から依頼受けて場所を絞り、3つの特定した県でローラーかけたところ、虐待歴でひっかかり支援につなげることができました。そのような横のネットワークを築いていく必要があります。

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