2021.5.6

日本で子どもの権利は守られているのか?こども庁は“届かない子どもたちの声を聴く”省庁に!【前編】

4月26日、私(山田太郎)が事務局を務める第12回目の「Children Firstのこども行政のあり方勉強会〜こども庁の創設に向けて〜」を開催しました。

本日もオンライン含め国会議員と地方議員合わせて100名以上の先生方が出席してくださいました。毎回多くの思いのある先生方が参加し続けてくださり、大変嬉しい限りです。

写真)司会を務める私(山田太郎)

さて、今回は「子どもの権利」をテーマに、盛りだくさんの内容で実施しました。

こども庁を「こどもの権利を守るための庁」とすることは大前提です。その中で、現在の日本では、どういったところで子どもの権利が守られていないのか。そして、こども庁ではこどもの権利を守るためにどのような機能が必要なのか、という点について改めて整理し、議論を深めました。全部で3回に分けてお伝えします。

日本財団の笹川陽平会長・高橋恵里子国内事業開発チームリーダー、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン西崎萌さん、子どもの声からはじめよう川瀬信一代表理事・Children’s Views & Voices中村みどり副代表にそれぞれご講演いただきました。

また、法務省より「アドボカシー等について」、厚生労働省より「広島県の児童相談所に一時保護された子どもが施設で死亡した件について」説明をもらいました。

写真)今回登壇いただいた5人の方々

当日は、日本財団のお二人からは「こども基本法」の制定について提言がありました。実は、日本には「こども基本法」がありません。理由は、「子どもの権利条約」を批准した後の経緯にあります。

写真)日本財団 高橋恵理子さん(左)、日本財団 会長 笹川陽平さん(右)

1989年に国連総会で「子どもの権利条約」が採択され、1994年に日本はこれを批准しました。子どもの権利条約とは、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約のことです。大人同様の1人の人間としての人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子どもならではの権利も定めています。その子どもならではの権利は4つあります。 生きる権利、育つ権利、守られる権利、そして参加する権利です。

図)ユニセフより

しかし、日本政府は批准したものの、現行法で子どもの権利は既に守られているとの立場を取り、国内法の整備を行いませんでした。これは、障害者権利条約批准の際に、障害者基本法の改正、障害者総合支援法や障害者差別解消法の成立等が行われたのとは対照的な出来事です。

図)日本財団提供資料

したがって、日本では子どもに関わる個別法は存在しますが、子どもの権利を包括的に定めた「子ども基本法」が存在しません。故に、子どもの意見の尊重や子どもの最善の利益の優先などの規定が、福祉分野では定められているものの、 教育/司法分野にまでは及んでいません

以前、第5回勉強会でお呼びした奥山眞紀子先生からもご指摘があったように、”子どもが権利の主体である”と明記されているのは児童福祉法のみであり、教育基本法では明記されていません。そのため、”子どもが権利の主体である”という認識に対し、教育と福祉でズレが生じており福祉と教育の連携を難しくさせている要因の一つになっている、という強い訴えがありました。

図)高橋恵理子さん提供資料

日本では、児童虐待、いじめや自殺、不登校などが深刻さを増しており、子どもの権利が守られているとは言えない状況であります。そして、各分野における子どもに関する施策は整合性を持って実施されていません。これらを解決するには「こども基本法」のような、施策の方向付けを行い、他の法律や行政を指導・誘導する法律が必要だ、とご提言がありました。

この点は、まさに私ども立法府の責任であります。こども庁の創設に向けた議論の過程でしっかりと議論していきたいと思います。

関連記事