2021.5.20

ベビーライフ事件【続報】

3月23日、特別養子縁組をあっせんする民間団体「ベビーライフ」(東京)が昨年7月に突然事業を停止した問題で、団体が2012~18年度にあっせんした約300人のうち、半数超の養親が外国籍だったことが、読売新聞の取材でわかりました。

私は、「子どもたちの安否を早急に確認する必要がある」「子どもたちの出自を知る権利を保障する必要がある」という観点から、本件について、東京都と厚労省に3度の確認をしています。

経緯を簡単に説明すると、養子縁組あっせん法によって特別養子縁組あっせん団体の許可制が導入されましたが、ベビーライフは東京都で審査保留中だったため、調査対象外でした。そして、ベビーライフが突然事業を停止し代表とも連絡が取れていないことから、海外に渡った子どもも含めて、子どもたちの情報を民間も政府も誰も把握できていない、という状態です。

養子縁組あっせん法では「国内が原則」とされていますが、団体が2012~18年度にあっせんした約300人のうち、半数超の養親が外国籍だったという事実は、読売新聞がハーグ国際養子縁組条約の締結国のデータをつぶさに調べ上げ判明した数字です。(読売新聞の記者にも確認しています。)

そこで、条約や出国を所管する外務省に確認したところ、「ハーグ国際養子縁組条約」を締結しておらず国際養子縁組の件数は把握していない出国記録も把握していない。」という回答。ならばと、法務省最高裁判所にも確認しましたが、家庭裁判所での国際養子縁組の許可件数を把握していない、という事実が判明しました。

養子縁組のあっせんは16年成立の養子縁組あっせん法の所管は厚労省ですが、本件は東京都所管で縦割りの弊害が発生しています。国際養子縁組がすべて悪いというわけではなくもちろん幸せに暮らしている子どもたちもいるでしょう。しかし、日本政府として、それらの数すら把握しておらず安否確認ができていない状況はあってはならない状況です。

本日(5月19日)、本件について、調査の最新状況を確認したので報告します。

【東京都】
①   ベビーライフ代表と連絡は取れているのか。

回答:住所はわかっており手紙は送っているが、返事がない。でも、手紙がかえって来ていないので、おそらくそこにいるのではないかと思う。
 

② 3月の時点で代表から説明なく段ボールが送られてきた394件の断片的な情報だけで、全体の把握もできていないとのことだったが、新たな子どもの状況はわかったのか。

回答:細かい情報は3月以降もそれ以上のものはでてきていない。ただ、4月にベビーライフが解散する直前の委託していたクリニックを調査した結果、子どもの名前程度はわかった。数は、数十人。

 厚労省との連携状況はどのような状況か?

回答:情報交換してる。先日も課長と情報共有した。
 

④ プロジェクトチームなど国との協働はないのか。

回答:ない。

⑤ 今後をどのように対応していくのか。

回答:こちらからのアクションは決まっていない。養子縁組をした先方から問い合わせがあれば対応している。情報がこれ以上ないので限界がある。代表と連絡を試みているが、現時点で団体も代表も違法行為をではないので、警察も動くことはできないし何もできない。

【厚労省】
① 先日、外務省と協議しているとの話だったが、結果はどうなったか?

回答:昨日からアメリカとカナダ等の日本大使館、領事館HPに「ベビーライフが廃業しました。ご相談はこちらにご連絡ください」と掲載をして、東京都育成支援課とつなぐことになった。外務省の都合で恒久的にのせるのが難しく、新着情報で約1年ぐらい掲載の予定。

以下本日時点で記載が確認できている国
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○在米大使館 
https://www.us.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
○アトランタ総領事館(アラバマ州,ジョージア州,ノースカロライナ州,サウスカロライナ州)
https://www.atlanta.us.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
○ロサンゼルス総領事館(アリゾナ州,カリフォルニア州 ロサンゼルスオレンジ,サンディエゴ,イムペリアル,リヴァーサイド,サンバーナディノ,ヴェン チュラ,サンタバーバラ,サンルイオビスポの各郡)
https://www.la.us.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
○マイアミ総領事館(フロリダ州)
https://www.miami.us.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
○ナッシュビル領事館(アーカンソー州,ケンタッキー州,ルイジアナ州,ミシシッピ州,テネシー州) 
https://www.nashville.us.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
○シカゴ領事館(イリノイ州,インディアナ州,ミネソタ州,ウィスコンシン州 ,アイオワ州,カンザス州,ミズーリ州,ネブラスカ州,ノースダコタ州,サウスダコタ州) 
https://www.chicago.us.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html本日時点で確認したところ、在米大使館のほか、上記5箇所のアメリカの領事館で掲載されている。
カナダ大使館HP(https://www.ca.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html)にはまだ掲載されていないようですが、アメリカ・カナダいずれも今後順次掲載されていくものと思われます。
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② 今後どのように調査、対応するのか。 

回答:様子を見ながら。手紙で代表と連絡とる以外の手段が思いつかない。他に連絡先を知っている人がいないか聞いたり粘り強く行う。あくまで主導は東京都。打合せやメール、連絡は密にしている。

回答は正直ほとんど進展がない状況でした。特別養子縁組あっせん法が施行されたことで団体が許可制となり、悪徳な団体は排除できるような法制度になりました。しかし、今回のベビーライフの事件は施行前の過渡期だったとはいえ、日本政府として、特別養子縁組の数すら把握しておらず安否確認ができていないということに問題があります。民間が担っている以上は突然の廃業リスクはどの団体にもあり得ます。

私は、子どもの出自を知る権利を保障するため、以下の対応が重要であると考えます。

・許可団体が廃業をした場合も、しっかりと都道府県に情報を引き継げるシステムを整備すること

・特別養子縁組のデータベース化

引き続き、東京都と厚労省にも調査を迫るともに、今後このような事件が生じさせないよう制度の見直しを進めていきます。

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